天空海戦物語 #37はこんな感じで構築中です。
どんな魔法式も解いてしまう最強の魔法機械技術者、貴姫に制限をかけるには、これくらいしか方法が思いつかないというのが。
「〈鳥籠〉魔法の魔法式の中に、この世界の基礎的な物理量が含まれているから、その微細構造定数の本当に小さな揺らぎが原因だと思うのだけど……たぶん?」
貴姫様が自信なさげにつぶやいた。
「あの……だって、貴姫様に解けない魔法式なんて……?」
私は、信じられない気持ちで聞き返して――貴姫様の困ったような苦笑いで気づいて、あっ! と、思わず口元を覆った。
星魔法の演算透過性!
貴姫様がうなずいた。
「いくら私でも、方程式を無視する魔法式なんて解けないわ」
「私が作った〈鳥籠〉は、器に過ぎないの。それが、どうやって、ちゃんと意図したとおりに星魔法の〈鳥籠〉として機能しているのかは、残念だけど、わからない」
「〈鳥籠〉魔法は複雑な六つの解を持つ連立方程式の集合体なのだけど、そのすべての解は、この器は鳥籠ではないと答えを返しているの。でも、星魔法の演算透過によって、解が〈鳥籠〉魔法に書き換わっている」
「奇跡を入れる器、それが〈鳥籠〉なの」
奇跡を定量化することはできないわ。
「鳥籠が〈鳥籠〉である理由は、ひとつだけ。その内に鳥を宿していること」
にっ と、貴姫様が笑った。
「たとえ計算できなくても、答えを導く方法はあるわ」
計算できないんだったら、統計的に攻める方法はあるもの。
「耳を澄ましてごらん。沙夜ならきっと聞こえるはず……」
カクヨムwebコンテスト3が終った頃に公開したいなと。