「異世界ラジオのつくりかた」第82~84話は、「おわるラジオとはじまるラジオ」というサブタイトル。今回改稿しようと思った一番の目的であり、一番の難産でもあるシーンでした。
今回の話のテーマは「番組の終わり」と「放送局の終わり」。このうち「番組の終わり」はまだ書きやすいものの、「放送局の終わり」については複雑でなかなか書きにくいところ。初稿の発表当時は「閉局のことはまだ触れなくてもいいか」と思っていたのですが、年々状況が変化して毎年のように閉局するコミュニティFMが増え、数年前には県域のFM局も複数閉局するという事態が発生しました。
「さすがにこのまま濁すのはどうだろう……」と思い改稿を始めたけれども、詰まったのはやはりこの場面。「ラジオのことを知り始めた子にどう伝えればいいのか」という壁に直面します。深く切り込めばマニアックすぎる視点になりかねないし、ルティとピピナを傷つけかねない。かといって非常にソフトな触れ方をしても改稿前のように伝えにくい。散々悩んだ結果が、今回公開の改稿版となります。
「本当にこれでよかったのか」という思いはありますが、これが今の自分の力量です。
閉局になるということは、その放送局で流れていた番組が、そしてコミュニケーションがほとんど途切れるということを意味するのです。
閉局は「リスナー」にとってもショックなもので、自分も数年前によくメールを投稿していた番組のあった放送局が閉局となり、その後閉局自体は最後の日に撤回されて新しい母体のもとに復活は遂げましたが、閉局に伴い終わってしまった番組が再開されることはありませんでした。
なんとも言えない巡り合わせで、昨日またひとつの局が閉局を発表しました。コミュニティ放送局は規模によりコストがかかることがある関係上、以前からそういった話はポツポツと出ていたのがここ最近はかなり顕著になっていました。頻出する理由のひとつに「インターネットによる情報発信の普及」というのが、やはりかかるコスト的には段違いなのかな、と納得してしまう面もあり、なかなか歯がゆい状況が続いています。
そういった中で大事なのは「ここにはこういう放送局があるんだよ」と認知してもらうための活動だと思うので、自分としては作品の中で「コミュニティFMという存在がある」ということを知っていただけるひとつの機会になればと、そう願っています。
コミュニティFM局は、局それぞれに特色があって面白いんです。その面白さがもっと(局側からの発信も含めて)広まっていけばいいな、とも。そう思うのです。