異世界ファンタジー爆死につき、次はリッチ様と同様に現代ファンタジーで考え中です。
雰囲気をつかむべく第一話を書いてみたので、コメント頂けたら嬉しいです!
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「夢乃間燈真くん。どうか私とチームを組んでください!」
この学校に転入してきたばかりの僕に、絶世の美少女が頭を下げている。
どうしてこうなった……。
僕はどちらかというと縁の下の力持ちとか、なんなら影の支配者とかに憧れるタイプで、決して陽キャではない。
それに能力も控え目で、しいて言うならちょっと他人より根性があるくらいだ。
固有スキルにもそれが現れていて、僕の固有スキルリストの1つ目は"ド根性"だ。
なお、カエルはいない。
そんな僕が朝登校すると、隣の席に座るめちゃくちゃ可愛い女の子が『おはよう』と声をかけてくれる。
そして薄っすらと頬を赤く染めながら『放課後、体育館裏に来てください』と蚊が泣くような声で呟いて来るので、しまったなぁと思いながらここにやって来た。
そこにまぁ、当然だけどこの娘はいた。
夕日をバックにしているが、むしろこの娘の方が光り輝いてるんじゃないかと思うくらいには可愛い。
彼女の顔、肩、そして華奢な体を包み込んでいるシルバーブロンドの長髪が光り輝いていて、なんでだろう……後ろの夕日より眩しいんだ。
少しうつむきがちだが端正なお顔、程よい……胸、腰のくびれ、柔らかそうな太ももに……いかんな、ただの変態親父になってしまった。
とにかく、彼女は可愛い。
まだこの学校に転入してきて2日目だが、勝手に学校一だと思っている。
少なくとも前の学校にこんなに可愛い子はいなかった。
テレビでも配信でもここまでの娘は見たことがない。
幼い頃にも可愛い女の子と遊んでる断片的な記憶があるけど、その子もまぁ可愛かったと思うけど銀髪じゃない。
きっと僕の好みだからというのもあるだろう。
細い糸しか通さないくらいにストライクゾーンを狭めたとしても、ピンポイントでぶち抜かれるだろう。
そんな娘からの呼び出しだが、告白か!とは思っていなかった。
予想通り、チームを組もうとのお誘い。
うーん、面倒くさい……。
ん?なんでだよって?
お近づきになって、いずれは恋人同士を目指せばいいって?
そんな簡単な話じゃないんだよ。
なぜこうなったかについては、とりあえず昨日あった出来事を語ればわかってくれると思う。
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「全員席に着け。HRだ」
「起立。気を付け。礼」
「「「「よろしくお願いします」」」」
朝の学校の何気ない風景だ。
特にこれといった特徴のない40歳前後の教師が教室に入って騒がしくしている生徒たちに少しきつめの声をかけると、生徒の一人がお決まりの声をあげ、全員が礼をする。
そこに特別な意味はないことが多いが、今日は珍しくあった。
「じゃあ、転入生を紹介するぞー。入ってくれ」
「はい」
僕は事前に指示をされていたとおり教室に入り、全員の好奇の目に晒される。
「夢乃間燈真です。よろしくお願いします」
この学校は日本で最も優秀なダンジョン探索者育成学校であり、通常転入生などない。
あるとしたら一般の学校で突然才能を開花した生徒がいて、さらにその生徒がその時点で相当優秀な場合だけ。
10年に1度もない奇跡。
好奇心を向けられるのは当然だった。まぁ、全ての視線が好意的なんてことはありえないが。
当然ながらここの生徒たちは優秀なものたちの中でも日々競い合っている。
ダンジョンの何層まで行った、どんなモンスターを倒した、Aランク探索者に認めてもらえた、珍しい武器をゲットした、可愛いファンがついた、優秀なパーティーに勧誘されている。マウントを取りあう出来事はたくさんある。
「夢乃間くんはすでにBランクのライセンスを持つ優秀な探索者だ。みな、仲良くやってくれ。席はそうだな。天城の横が空いてるから、そこだ」
「「「!?」」」
教師が指さした場所は窓際から2番目の列の一番後ろ。
……窓際の席にはとんでもなく可愛い女の子が座ってる。あれがきっと天城さんなんだろう。
学校で目立つつもりはなく、むしろ静かに、穏やかに、こっそり生きていたい僕にはちょっと刺激が強すぎる気がするが……
「夢乃間くん。天城咲良です。よろしくね」
「あぁ、こちらこそ。よろしく」
少しだけ速足で席に向かった僕を天使のような美声が待っていた。
思わずにやけてしまう表情筋を必死に抑えつけ……そっけなく挨拶を返すのに全神経をついやし、なんとか完遂させた。
「あとは連絡事項だが、今日の午後はダンジョン探索実習だからな。昼食の時間が終わる前に全員準備して入り口の前に集合だ」
「「「「はい」」」」
こうして僕は陰キャにとってはドキドキの『転入生の自己紹介』という非常に緊張するイベントを終え、さらには突如発生した『天使の隣の席になる幸運に感情を出さずに耐える』イベントもクリアしたわけだ。
一つだけ意外だったのは、『天使の隣の席』を指示されたにもかかわらず、特に嫉妬の視線や呟きがなかったことかな。
まぁ、みんな真面目に探索者としての実力向上を目指すクラスだからかもしれない。
そう思いながら僕は午前中の授業を受け流した。
そして給食……そう給食だ。この学校にはまさかの給食があって、ぼっちに安らぎの時間をくれなかった。
まぁ知ってたけど。
「全員集合したな。では行くぞ!」
冴えない顔の教師は後藤先生というらしい。
彼の引率で、クラスの生徒全員が順番にダンジョンに入る。
この学校は優秀なダンジョン探索者を育てる学校だと話したと思うが、なんと学校の敷地内に低ランクではあるが、ダンジョンを持っている。
そしてそのダンジョンを自由に使えるため、こうして探索実習なる授業を組んでいるんだ。
こんな学校。日本中探してもここしかない。これこそがこの学校の売りなんだけどね。
転入するにあたって構内ダンジョンに興味を持ったのは確かだ。
低ランクというかDランクのダンジョンだから5層までしかないにもかかわらず特殊なダンジョンで、ボスがランダムに変わる。過去にはBとかAランクダンジョンで出現してもおかしくないようなモンスターが出たこともあるらしい。
これ、事件の匂いしかしないよね……と思いながら僕もみんなに続いてダンジョンに入る。
なぜか天城さんは僕よりも後に1人で入ってくる。
「2名ずつ並べ。今日の休みは2名だけだからあまりはいないはずだ」
「先生!?天城さんとはさすがに……」
ん?
ダンジョンに入る通路は少し狭いから2人ずつ並んで入るという先生の指示はおかしくない。
でも、先頭の方にいる男子生徒から異論のような声があがる。なんで天城さんが避けられてるんだ?
まさかいじめ???
「今は移動するだけだ。行くぞ」
しかし後藤先生は取り合わない。
結構早いな。
僕達は送れないようについて行くのだった。
今日の実習は5層でのモンスターとの実践訓練らしい。
まだ入学して数カ月の学生のはずなのに。
思いのほか高度な授業を受けているようだ。
訓練はチームでもソロでもいいらしいが、ほぼすべての生徒がチームで散っていく。
「夢乃間君、一緒に来ない?」
「ありがとう。よろしく」
僕は誘ってくれた女子生徒について行く。
彼女は確か授業の始まりと終りに掛け声をかけている子だ。たぶん学級委員長とかなのかな?
聞けば騎士職らしい。
メンバーはこの子の他にもう2人。
魔道士の男と鍛冶師の女の子。
鍛冶師はちょっと珍しい。本来生産職だが槌を使うため腕力を活かして自分で戦うもの多い。けど、女の子で、というのははじめて見たよ。
本来はここにメイン火力となる戦士職の大柄な男子生徒がいるらしいが、今日は風邪で休みなんだって。だから僕を誘ってくれたんだろう。
僕は魔法剣士で、一応バフをかければそこそこ火力は出せる。予想以上にバランスのいい戦闘をいくつかこなし、この学校のレベルの高さを実感する。
「夢乃間君、先生の言うとおり凄いね」
「うんうん。指示が的確だし、回復まで」
「鰐淵君がいなくて今日はどうしようかと思ってたから助かったよ」
口々に僕に高評価をくれるのも嬉しい。
以前所属していたとこでは、僕の役割はひたすら支援だったから。思い出すと吐き気が……。
「夢乃間君?大丈夫?」
「あっ、あぁ。大丈夫」
いかんいかん。僕はもうここの生徒だ。あんな無茶苦茶な探索につれて行かれて、四六時中精神をガリガリ削られることはもうないんだ。
ここでのんびり適度にこっそりそこそこ優秀な探索者を目指すんだ。
ぶわっ……
なんだ?
クラスメイトと適度な距離感を保って実習をこなしていると、突如として不穏な魔力の放出を感じた。