「仔猫の事務所」更新しました。
タイトルは宮澤賢治「猫の事務所」から。

「猫の事務所」
青空文庫:https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/464_19941.html

文豪パスティーシュ第二作目です。あと一つパスティーシュ作品があるので準備が整い次第、公開できたらと思っています。
せっかくなのでリスペクトしてオマージュした人のことでも……。


・宮澤賢治について
宮澤賢治というとなぜか一番に思い出すのは歯医者さんの待合室。なぜだか自分でも分からないのですが、もしかしたら小さい頃に宮澤賢治の本が置いてある歯医者さんに通っていたのかもしれません。
それはともかく、これほど施設の待合室に置いてある文豪作品もないと思います。「風の又三郎」とか「注文の多い料理店」とか童話を詰め合わせた短編集とか……アンパンマンなみに身近ですよね。
童話作家の研究って、文学研究の中でもニッチなジャンルだと思うのですが、宮澤賢治においては話は別で、多くの文学者が研究をし研究書を出しています。かくいう私も大学時代に宮澤賢治の研究をしていたのですが、何を研究していたのかというと、彼の童話に謎めいた一節や表現は何を示しているのかを考察するということをやってました。

そういえば2018年のアニメ「けものフレンズ」の考察がネットでものすごく話題になっていましたね。
動物たちの優しい掛け合いの裏側で世界が滅亡していた背景があるとか、人類は滅んでいて既にいないとか……私が行なっていた宮澤賢治の研究もそれと似ていて、動物が多く純真そうに見える世界の中に不可解な一文や不適切に見える表現があったりするので、物語の文脈やその時点での作者の身辺に起こったことを参考にしながらその一文が書かれた経緯を考えていました。
例えば「オツベルと象」に出てくる最後の一文はなんなのかとか、「銀河鉄道の夜」で主人公のお母さんが眠っているシーンで顔に薄く布が掛かっているのは実は死んでいるんじゃないかとか、そして「丁丁丁丁丁」……読み込めば読み込むほど「死」や「性」を彷彿させる暗示がたくさんあって、怖い作家だなと思います。
作者本人も神がかっているところがあって、鬼才的な怖さもあります。民話や伝承の多い岩手の作家っていうところも加味するとなおさら……。
物語論だったかな、何かの本で読んだのですが、こちらではない「あちらの世界」に親和性が高いのが「子供」と「お年寄り」だそうで、宮澤賢治の童話が今でもたくさんの子供たちに読まれているのも、そういった言語外の感覚を大人よりもはっきりと感じているからかも知れません。