執筆におけるキャラクターの書き分けはどうしてるの?と、ご質問頂くことがあると、『そのキャラクターの価値観を設定して物語世界に放り込むだけ』とお答えしています。
どういうことかと言うと、その人物は、≪どんなことに一番喜びを感じ≫、≪どんなことに一番悲しみを感じ≫るのか、彼(彼女)の感情の≪上限値≫と≪下限値≫だけを設定して、あとは細かいことなどなにも決めずに、物語に登場してもらいます。
なぜなら、物語における人物像は、その人物の価値観がキチンと設定されていれば、他の登場人物や物語の中の障壁に接するうちに形成されていくものと考えているからです。
これは小説でも脚本でも変わりません。価値観の上限値と下限値が設定されていると、どんなに境遇や生活環境が似ているキャラクターでも、いわゆるキャラ被りはしないと思います。彼らの口調や行動心理は彼らの価値観に基づき、自然と形成されていきます。逆に人物像を設定し過ぎると、必ず物語のどこかで矛盾が発生します。
筋道(プロット)を立てて、あとは好きに動いてもらう、それが僕のキャラクター書き分け術です。
自分が演じるときの役作りも大体同じやり方でやっています。
演じる役の価値観を台本から読み取り、後は共演者とのやりとりや、劇中の障壁から細かく役の心理をフィードバックする。
そうすることで、より物語の世界観に溶け込んだ、オリジナリティーのある人物を演じることができるのではないかと思います。