2021年は伝奇ルネサンスの年です(突然)。
というわけで、新作の現代伝奇『異世界帰りの英雄曰く』でした。
お読みくださった方はありがとうございます。お楽しみいただけたら幸い。
まだの方は是非ご一読を。コンテストにも参加中ですので、面白かったらどうぞ応援よろしくお願いします。
というわけで、あとがきです。
念のためですが、本編のネタバレが含まれるため、第一章までをお読みいただいた後にご覧いただくようお願いします。
さて。
この作品は、書いたラブコメが「ラブコメじゃなくて伝奇だ」と言われる私が、「なら逆に初めから伝奇を書けばラブコメになるのでは?」というアホの発想により書き始めた――つまりが『逆説ラブコメ』です。です、ではないですが。
とはいえラブコメを書いた際、ぼくは別に「伝奇にしてやろう」と思っていたわけではなく、普通にマジでラブコメだと思って書いている(本当に)ので、だから今回もきちんと「伝奇」として書きました。現代異能ってヤツです。
結果、まあ、普通に現代異能ができましたね。これはラブコメではねえわ……。
そりゃそうだというところで、さて。
略称を『いりのく』と暫定しておりますが定着はしていないところの本作、かなり王道志向の、いわゆる古き良き系の現代異能を目指して書きました。
最近、本当にめっきり見なくなったこの手のジャンル。このカクヨムの現代ファンタジーのジャンル別ランキングを見ても、まあ上位にはほとんど存在しない印象です。
商業でも売れない流行らないという話は聞きますが、それ以前に存在してなくない? となってはまあ非常に寂しい。
かつての流行ド真ん中世代で、がっつり厨二病が不治の病となった私としては復興を目指したい、と常々思っていました。読みたい。そして書きたい。
では、じゃあ令和の時代にライトノベルで伝奇をやるならどうしようか――といったところで、それなら流行の《異世界帰還》と合わせてしまおう、と。
異世界帰還。
書き始めてからランキングをチェックした(バカ)せいで実は最初は知らなかったのですが、これは今、ウェブ現代ファンタジーの主流と言ってもいいほどの隆盛を見せておりますね。
ぼくは「まあ異世界帰還はみんな思いつくだろうけど、王道の現代伝奇と組み合わせてるのは見たことないなあ」という程度の思いつきで始めたのですが、想像を遥かに超える盛り上がりっぷりに「あれ、期せずして流行りを突いたぞ?」と、こっそりほくそ笑んだものです。じゃあ運じゃん……。
まあ、いわばゼロ年代の王道×10年代の流行、という感じで、その辺りがこれから先の20年代に復興してくれれば嬉しいな、と。そんなところです。
以下は内容。
伝奇と言えば――否さ、ライトノベルの物語と言えばボーイ・ミーツ・ガール。
本作は主人公である異世界帰りの高校生、元英雄である黒須大輝と、現代に隠れ潜む魔術師、魔女であるところの鳴見熾とが出会うことで物語が始まります。
大輝は異世界こそ知っていても、現代の裏に潜む伝奇的世界観についての知識がありません。
一方で熾は、大輝にとって現代の伝奇世界観の導き手であるものの、大輝しか持ち得ない、水面下で広がっている異世界の知識がありません。
対比、ですね。お互いがお互いにとっての解説役になってくれるため、交流が深まります。
性格的にも、真面目さは共通しながら、異世界の時間で失った日常を少しずつ取り戻していく大輝と、現代にいながら日常とは離れている熾のコンビネーションはなかなか書いていて楽しいものがありました。
そして戦闘。
異世界において振るっていた、聖剣由来の膨大な戦闘能力こそ失ってしまったものの、熾を上回る膨大な戦闘経験値を記憶に宿している大輝。彼は不可思議な力こそほぼ持ってはいませんが、培った冷静さと判断力、自身の無力さを自覚しながら折れない精神力を武器にできる主人公らしい男です。
また熾も熾で、魔術師の世界においてさえ複雑な過去と能力を持ち、現代の魔術師相手には無敵に近い魔女の力を持ちながら、力なくとも老獪で頭のキレる現代魔術師たちに相対していく中で、大輝と手を合わせることを覚えるのです。
実は「黒須大輝」は、プロットだけ存在する(本文はゼロ字)別の作品の登場人物――脇役のひとりとして考えていたキャラクターでした。
主役より主役っぽい過去を持つ脇役。戦う力こそないが、なぜか妙に冷静で頭のキレる主人公の友人、実は元異世界勇者……というような。
それなら、別にこいつを本当に主人公にしてやってもいいな、という感じで流用してしまった次第です。
世界観は同じなので、そちらの作品もいずれどこかでお披露目できれば、別々の側面から2倍盛り上がれていいなあ、と思っているのですが。
まあ、今のところは皮算用です。応援してね! と。
その他のキャラは、大輝を主人公とするなら――という風情で基本は新しく。
勇者に相対するべき魔女、鳴見熾。
存在しなかったはずの謎の妹、黒須凪。
疎遠になってしまった幼馴染み、朝妻唯架。
怪しいダブルクロスな運び屋、愛子憂。
未来科学技術を持つ淡々お姉さん、十野胡桃。
異世界に焦がれる哀れな魔術師、渡会空也。
魔女の過去を知る歴戦の精神建築家、渡会一也。
魔女の父親、鳴見灼。
名前が出てたのはこのくらいでしょうか。
このうち朝妻唯架ちゃんと、名前は出ておりませんが熾の言っていた「今は不在な、この街の本当の管理者である魔術師」は、別作品にも出る予定でした。
喫茶店のマスターです。
舞台であるこの《埼玉県さいたま市大宮区》には、現実とは違い、化物みたいな連中が大量にひしめいています。
まだまだ出ていないキャラが、きっと本作や別作品を通じてお目見えすると思いますので、その際は、みんなを好きになっていただければ嬉しく思います。
そんなところで。
今後の更新はひとまず未定です。コンテストの結果が出てから、いろいろ考えていきたいところですね。
あ、落ちたら続き書かない、とかは言わないので(優先度は下がるけど)、その点はご安心を。
涼暮皐でした。