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続き2です

終わりまでの構想はまとまりましたが、細かい部分をブラッシュアップしたいと思うので明日、天気が良ければ絶壁の山、熊牟礼城に行きながら、良い言い回しを考えたいと思います。

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タイトル;【人を殺す事、歴史を変える事】


「にいさまも今度、いくさにいくのですか?」

入田討伐で動く中、不安そうな声で斎藤鎮実の妹、椿ちゃんに言われた。

しまった。

今回の戦いは斎藤家にとって当主を讒言で殺した入田との戦いだ。
つまり、不参加はありえない。という事である。
転移して20日で合戦を指揮するとは思ってもみなかった。
自分の指示一つで人が死ぬ。敵でも、味方でも。

『僕にその手を汚せと言うのか?』
というSRPG屈指の難題があったが、実際にはその他大勢である一般領主に選択肢はない。
決断をするのは大名の大友義鎮(宗麟)さんだ。

「にいさま。お顔が真っ青ですよ。大丈夫ですか?」
気がつくと椿ちゃんが心配そうにこちらを見上げている。
「あ、ああ。父の敵とはいえ人の命を奪うのは可哀想だと思ってね」
精一杯の強がりで安心するように笑いかける。
いけない。このままだと父の次には兄も死ぬのではないかと心配させてしまう。
そう思った時
「おーい、さねえもーん」
気の抜けるような声が聞こえる。
我らが当主、大友義鎮である。

「にいさま、この『おじさま』はどちらさまですか?」

純粋な幼子の言葉に胸を抑える当主。
『よししげに255のダメージ』という解説が聞こえた気がした。
子供の正直さは時として残酷である。

「えーとね。この『おにいさん』は大友義鎮様。大友家の新しい当主様だよ」
 そういうと、幼くても偉い人だとわかったのだろう。
あわてて背筋を伸ばすと
「おやかたさま!はじめておめにかかります!」
緊張した様子で言った。

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豊後の当主 大友宗麟。
父親が数日前に亡くなり、長男ということで領主たちの支持を得て当主になれた、雇われ大名。
自分と同じく現代からやってきた人間の精神が宿っている人でもある。
「おやかたさま」
中身は別人でも見た目(の衣装)は立派な戦国大名。
無言の威圧感を感じながらも椿ちゃんが真剣な顔で義鎮さんに訪ねる。

「にいさまは、生きて帰られるでしょうか」

「こ、こら!」
不躾な問いに私はあわてて制止しようとする。
見た目は戦国大名だが、中身は一般人なのだ。
そんなプレッシャーになるような事を言っても答えようがないだろう。
そう思ったのだが、義鎮さんはしゃがんで椿ちゃんと目を合わせると
「ああ、ワシはお兄さんをちょっとお借りするけど、必ず生きて帰ってくるからね。さびしいかもしれないが、少しだけ我慢してほしい」
 と、笑顔で答えた。
その言葉と顔を見て、椿ちゃんは半信半疑ながらも
「ありがとうございます。ふつつかなあにうえですが、どうかよろしくおねがいします」
と、知っている語彙を駆使して深々と頭を下げた。

戦いには絶対はない。

だが、その顔には人を安心させるものがあったからだ。

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椿ちゃんと別れると宗麟さんは、ふぅうううう。と息をついて言った。

「ところで、さねえもん。この時代って豊後には鉄砲とかあるんだっけ?」

「アンタ、そんな事も知らずに、大丈夫とか言ったんですか」

がくりと肩を落とす。先ほどの感動を返せ。
「いいかい。さねえもん。社会に出るとね、心の中では『いやだよ。そんな成功するかどうか分からない仕事、言質とらないでくれよ』と泣きたくなるような状態でも、お客様を安心させるために『大丈夫です』って笑顔で言えるスキルは必須なんだよ」
いりませんよ。そんな知識。
「まあ、相手に心配をさせないためのやせ我慢ってのは、こんな感じでピンチの時ほど笑うもんなのさ」
Drコトーみたいな事を言い出した。
「ちなみに、その後に3ヶ月ほぼ休みなしで働いて、建物は完成したものの体と心を壊したから退職したことがあるぞ」
それは自慢になりません。

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「で、どうします?入田の津賀牟礼城というとそれなりに険しい山の城ですよ」
「ああ、あそこだろ。仕事のついでで3回ほど行った事があるよ」
そういうと、大まかながら地図を書く。
「真正面は大きな崖。北からの入り口は狭くて上から物を落とされたらやっかいな場所だよな」
「ええ。ご存じだったのですか?」
「ああ、一度イノシシに遭遇して死にかけたからな」
右が崖。左が斜面の逃げ場がない場所の恐ろしさを身を持って体験したという。

ならば、だいたいの高低差や敵の集まる場所は分かるという事だろうか。
ならば、と私見を述べる。
「まあ、この時代火薬は貴重品だし鉄砲も数が少ないので主力は弓と投石でしょうね」
「飛距離はどれくらいかな?」
「殺傷力があるのは80mくらいですが、高所からなら4~500mは届くでしょうね」
「ふうむ」
距離から見ると、ふもとにすら近寄れない。
「さねえもんだと、どう攻める?」
「そうですね。まずは竹束で楯を作り、火矢で敵の櫓や塀を燃やせるだけ燃やして、防備を潰してから兵を突撃させるのがセオリーでしょうか」
 そういうと御屋形様は渋い顔をして
「それだと味方も敵も死傷者が出るじゃないか」

「戦争だから出ないわけがないでしょう」

何を言っているのだ?この人は。
「やだよ。俺。車もないのに20kmも歩いて、その上、布団もないのに、この寒空で野宿しながら殺し合いなんて面倒なこと。特に竹田って内陸だから冬場の朝は寒いんだよ。これが」
戦場で戦っている兵士に謝れ。
などと思いながらも、心配そうな椿ちゃんの顔が去来し、確実に勝てる方法を考える。
臼砲とか、硫黄による軽い有毒ガスを発生させるなど、未来の兵器の使用を検討したが
『新技術を使うと歴史を変える事になるかもしれない』
と思い躊躇した。

 昔の映画や小説で過去を変えると未来が変わり自分たちが存在しなくなったり、死ななくてよい人間が死ぬかもしれないという思考実験は何度も繰り返され、歴史に抗おうとして結局破滅へと向かう話を何度も見てきた。
または、未来を変えようとしても歴史の修復力とやらが働いて結局結末は同じになる。
というちょっと教訓めいた結末が多かった。
ありきたりで保守的な考え方だと思うが、実際に自分の行動で多くの人の未来が変わると思うと不安になる。

仮に目の前の人を助けても、結局は別の形で死ぬかもしれない。
余計な知識を得て、史実よりも悪い方向に歴史が変われば責任はとれるのか?

そうなるくらいなら、いっその事見て見ぬふりをした方が良いのかもしれない。
冷たいかもしれないが、それだけ未来から来た自分の知識、いや人類の知識の蓄積は強力なものなのだ………………

多くの先人作家が結局史実ルートに進むべきだとしたのも、個人の力で変えてしまった歴史の後悔に常人は耐えられないと長い思考の果てに結論付けたからかもしれない。

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…………などと考えていたら、翌日
「コンクリートができたぞ!さねえもん!」
などとほざいて、日本の建築技術を50~300年すっとばしてはしゃぐおっさんがそこにいた。

………私の悩んだ時間、返してください。

2件のコメント

  •  ハハハハ( ̄∀ ̄)未来などぶっ壊してなんぼですよ逆行憑依のさねえもん♪つーかひと昔前のタイムパラドクスなんざ世界は無限に分かれ偏在するってアメコミで流行ってるワールドバース理論なら起きない起きない♫異物の歯車たる宗麟公とさねえもんがこの戦国のオルゴールに収まった以上は史実とかけ離れたセレナーデが奏でられるのは必然にして定め(運命)(^皿^;)生き抜く事に全力疾走しなければこの先さねえもんも椿ちゃんも戦火の炎に焼き尽くされてしまいますぞ。

     しかし他者視点それも相棒であるさねえもん視点でのお屋形さまの威風堂々っぷり(^◇^;)本編ではヘタレな内心のぼやきのせいで『大丈夫なのか、この人(´Д` )』と読者にも見られてたけど、こんなに安心感を与える存在なんですなー、そりゃ豊後の忠臣たちも「この人ならば」と担ぎ上げ神輿にしますわなー(確信)。

     意外な番外編に歓喜の金具素屯( ᐛ )و初出のさねえもん妹の椿ちゃんカワイイよねー(´ω`)本編でのレギュラー化はまだでしょうか?www。
  • 限定公開にするの忘れてました。(汗
    お試しギフトをくれた方への御礼として書いたものですが、まあ年末くらいに閑話として出すのも有かなと考えています。
    1980年は歴史を変えるのは悪いことだという話があまりにも多かったので、それにたいする話となると思います
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