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読書記録 三浦しをん先生『マナーはいらない 小説の書きかた講座』

 本日紹介するのは――三浦しをん先生の『マナーはいらない 小説の書きかた講座』です。

 だいぶ前に読んだものですが。

 私は実は、三浦しをん先生の小説は読んだことがありません(たぶん)。
 そしてこれは、小説の書き方レクチャー本……。

 読んだことのない作家さんの作品。
 自分のやり方を否定されるのではないかという不安。
 この本を手に取るまでには、かなりの時間がかかりました。

 そんな私の背中を押したのは、「これを読めばもっと自由に文章が書ける」という内容の広告文でした。
 当時(もちろん今でもですが)、もっと上手に文章表現ができるようになりたいと思っていた私は、この本は正しい方法を押し付けるものではないと信じて、表紙を開きました。

 そうしたら。

 そうそう、そうなんだよね!
 ああ、そうなんだ!

 のオンパレードでした。

 読みながら頷きっぱなしでしたが、特に強く印象に残っていることを四つ、紹介させていただこうと思います。

 一つ目は、短編の構成についての部分です。

 私はそれまで、短編を「字数が少なくて楽なもの」と捉え、ただ何となく、思い付いた言葉を並べてぱーっと書いていました。
 ええ、もちろん面白くなんかなりませんでした(ミラクルはあったかもしれませんが)。

 読者様をどう惹き付けるか、一番熱い部分は何か、どういう余韻を残すか。

 ガチガチに固めすぎても窮屈になってしまいますが、何を書きたいのか、どうしたら楽しんでもらえるかをきちんと考えて書いた方が、面白くなるのではないかと気付かされました(あくまで私の場合は、ですが)。
 当然のようにも聞こえますね。

 二つ目は、取材についてです。

 私は生粋のインドア派です。
 出掛けるのは生きるのに必要な時のみ。外に遊びになんて行きません。家で小説を書くのが一番。

 しかし、三浦先生は作品のために自らの足で取材に赴き、私の大好きな作家さんも、作品のために格闘技のレッスンを受けたというお話をされていました。
 一方私は、家に籠って本とネットを漁るのみ――。
 作品のために外へ飛び出す力の無い自分に、引け目を感じていました。

 ですが、コラム『お口直し・その二』で三浦先生は、

 取材を必要としない内容の小説を書けばいい。
 脳内王国を小説に叩き付ければいい。
 本やインターネットから情報を探せばいい。
 小説の題材は何でもいい。

 という風に仰っていて、確かに、と。

 外に出ないことだって自分だけの経験ですし、取材が無ければ小説じゃないなんてことはありませんよね。
 どんな小説も自分の小説ですから、自分なりにできることを続けていこうと思います。

 三つ目は、小説にアドバイスをもらう必要はない、ということです。

 自分が書いたものをジャッジできない人は、小説を書くことにあまり向いていないかもしれない。
 身近な人からの感想は厳しすぎるか、気を遣われるか。
 的確なアドバイスができる人はそういない。

 これも、確かに。
 小説を正確にジャッジできる評論家さんの探し方など分かりませんし、そもそも自分で書いたものがどうであるかを見ることができなければ、小説を書き上げることは難しくなりそうです。

 そして三浦先生は、小説をジャッジする力は、好きな小説(に限らず創作物全般)を味わうことによって培われる、とも仰っていました。
 書く方が多い毎日ですが、他の方の作品も沢山味わって、自作を客観的に見る目を磨いていこうと思います。

 そして最後、四つ目は、「だれが書いた小説にも、必ずいいところがある」、という言葉です。

『カクヨム』さんで活動していると、沢山の新人作家さんに出会うことができます。
 執筆一日目の初心者さんの作品にだって、良いところはあります。

 私もある日は、執筆一日目の初心者でした。
 私が昔(といっても一、二年前かそこらですが)書いた小説は、台詞ばかりの台本のよう。地の文はあっても事実を書いているだけで、これまた台本のよう。
 なのに小説にしようとしているから、この台詞は誰が言っているのか、今は誰が何をしているのか、全く分かりません。
 ついつい、0点を付けたくなってしまいますが――。

 キャラクターの内面の作り上げやキャラクター同士の関係、世界観、設定などは、かなり魅力的だったのではないかと思うのです。
 そして、私はその作品が本当に大好きで、そのキャラクターたちは、今でも心の中で暮らしているように感じています。

 それだけの愛を込めて書いた小説は、全然、0点なんかではありません。
 ただ、足りない部分ももちろんありました。

 当時の自分に足りていなかったのは、自分の作品を他の人に伝えたいという気持ちです。
 三浦先生は、「自作に思い入れることと、自分以外のだれかと作品を通して理解しあいたいと願うこととは、両立しますし、どちらも同じくらい大切です」と書いていました。
 自分の作品を愛しているのなら、それを伝えたいという気持ちを持っていてもきっとマイナスにはならないのですが、うーん、足りていませんでしたね。



 ここまで、『マナーはいらない 小説の書きかた講座』のごく一部を紹介させていただきました。

 ……これを書きながら本を読み返しているのですが、忘れている部分も多いですね。

 冒頭にも書きましたが、私は今でも文章での表現を上達させたいと思っています。この本をまた何度も読み返して、自分だけの作品を書いていきたいです。



 近況ノートで本の紹介をするのは、初めてのような気がします。
 また素敵な本に出会ったら、紹介させてくださいね。

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