6話の中でちい姫が柾路に贈った文の色について、宮さまが「季節外れの雪の下」と言っています。
平安時代、十二単でおなじみの女房装束は色とりどりの衣を重ねて着るのですが、その色の並びなどに名前がつけられたものを、「襲(かさね)の色目」と表現していました(自己解釈)
その襲の種類に「雪の下」というのがあり、一番上に白、その下に紅梅を重ねたものなのですが、梅に雪の降る様や春の訪れを表しています。つまり春の色なんですね。
作中はまだ秋で、春には程遠いため、宮さまは「季節外れ」と言っています。
無知なちい姫がなんとなくで選んだ色ですが、無垢な白にじんわりと見える紅梅はにわかに芽吹いた恋心を表しており、それをうっかり文で伝えてしまった、ということなのです。そのことに気づいているのは文が贈られた柾路と、宮さまのみ。
平安時代のこういう、直接的ではないにしろ意味がわかると奥が深い雅やかな文化に憧れて、平安時代の物語を書きたいなと筆をとったのでした……。