• 現代ファンタジー

十字路の狼シリーズ 後書き

 第一話 執筆時後書き

 世の中にある物は、そう簡単に言葉では言い表せないのではないかと思います。例えば善と悪、生と死、とか。口にする人が違うのだから、同じ言葉で言い表されるのだとしてもそこにあるのは違う物なんだと思います。だから、同じ言葉で語っても、中々通じない時もあるんでしょう。
 凄く不安定な世界に住んでいるのだ、と思う事が多いです。
 この世にある意味で同じ物は何も無いのだ、と思います。この世にある物が全部同じに見える時もあるけど。

 幸せとは何か、不幸とは何か、考える事も多いです。
 誰かが称賛する物が本当に善なのか、誰かが憎む物が本当に悪なのか。
 個として生きるのか、種として生きるのか、と言う事を思いつきました。人は個を強く持ち、なおかつ個を尊重する生き物ですが、獣はどうなのか、と。
 獣は生き残る事が使命で、子孫を残す事が重要です。
 より強い遺伝子だけが生き残って行く。多分それは人も同じなのでしょう。でも、それが本人ではない事に強い感情を覚えるのは、人間だけなのでは。
 だからこそ、死への恐怖があるのではないでしょうか。
 人間の恐怖は自己の喪失。
 獣の恐怖は種族の消失。
 そもそも、恐怖の存在もあるのだろうか。私には私以外の事は分かりません。種族が違えば推測も難しいです。
 ただ、砂原荒野は狼の一部を持つ人で、狼となるべく育てられた少年です。私がこの物語を書いたのは彼の選択を知りたかったからです。
 この作品は想像に拠って書かれたものです。
 でも、言葉で言い表せないものを欠片でも表すために、小説を書くのだと思います。
 狭間で揺れる物が、必ずあるはず。

 言葉にならない言葉を、どうか貴方が受け取って下さりますよう。
 関わって下さった全ての人に向け、感謝を込めて。

(第一話執筆時に書いたものを再公開)


『十字路の狼』シリーズ総括 後書き  

 最初に思い浮かんだのは、無機質な街中の交差点で戦う人獣達のイメージでした。彼らは、人々に気付かれることの無い世界の裏側で戦い続けていました。
 戦闘と流血と、死に満ちた青春を送る少年少女。
 彼らの物語を書きたいと思いました。
 青春なんて、甘酸っぱいと言うけれど辛いことも多いです。
 私は、薄暗い青春を叫びで切り裂いて駆け抜ける彼らを、見ていたかったのです。
 今、世の中には疲れた雰囲気が漂い、様々な問題が顕在化し、現実として私達の生活にも変化が訪れています。差別、格差、経済、食料、貧困、不穏な空気を纏った社会の抱えた病巣は今も昔も数知れず、これから、どうやってどのような手段で私達は問題と付き合っていけばいいのでしょう。そんなことを呟いている間にも、否応無く世界は変わっていきます。
 幸いなことに、私は今、平凡で平穏な生活を幸せに送れています。その意味を、最近よく考えます。幸せを感受しながらも、どうにかして自分の武器を手に入れ、できれば問題が起こってから時既に遅しとならないように事態に備えたいと思っています。
 武器は、知恵と、知識と、自分自身の勇気。
 明確な答えなんてどこにもない時、自分の意思で決断できる力。
 後は、いつでも笑えることでしょうか。
 
 『十字路の狼』は三部作として、今回で一時完結となります。
 
 確実に死んでいく者が居る中で、どうか生き抜いて欲しいと願いを込めて。
 万感の思いと、何度言っても足りない感謝の言葉を。
 ここまで読了有難う御座いました。
 
 これからも、一瞬の光のある物語を紡いでいきたいと思います。

(執筆時の後書きを一部編集して公開しています)
(第二話、第三話の時の後書きは書きませんでしたので、存在しません)

 高校時代に書いたものを直して投稿した作品ですが、青いな~青春だな~って感じですね。
 とはいえ、当時の嘘偽りのない気持ちであり、書いたものを積み重ねてここまで来ました。いつも、書くことが楽しいという気持ち、進んで自分は筆をとっているのだという気持ちを忘れないようにしようと思います。

コメント

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