• 異世界ファンタジー

非有の皇子×辺境の教会


その頃のツクヨミは……

『グスッ…グスッ…うぅっ…フランス…万歳…‼︎』

薔薇の定めに導かれていた。


※近年の某展示でマリーアントワネットとその母、マリア・テレジアが香道具や蒔絵などの漆器コレクターだったと知った那由多が、妹にマリーアントワネットについて話したら、この名作を猛烈に勧められて読んだという記憶の漫画部分をツクヨミが暇つぶしに読んでいます。


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※ちょっと残酷な表現が入ります。



ダリル辺境伯領主都ヤクトシュタインは、外から見ると、街は魔物避けか外壁に囲まれ、ビタミンカラーを取り入れたカラフルな屋根達に、白かったりクリーム色だったり、茶色かったり統一性のない壁面が目に楽しい家々が、ごちゃっと並んだ明るい街並みだ。もしかしたら、戦時に敵の侵入を拡散させる為にごちゃっとしているのかもしれない。

小高い丘の上には、質実剛健という様な要塞がある。

硬質な要塞と明るい街並みが、全くもって統一感がないのに不思議と合っている面白い街だ。奥の方には深い青色が見える。漁業も盛んそうだ。暫く魚や貝などの魚介を食べていなかったので、市場をのぞいたり、屋台を見たりするのがとても楽しみだ。

馬車が動き出し暫くすると、外から大きな声で、

「開門ー!!開門ーーー!」

と、聞こえてきた。馬車から降りずに街にこのまま入れるみたいだ。
隣に座っているティーモ兄様が、馬車の窓に張り付いて手を振っていた。俺も気になってティーモ兄様の覗いている窓を見ると、小さな子供達が馬車が動く速度に合わせ走りながら手を振っていた。

その光景を和かに周りの大人達が見守る。街の人たちも明るそうだ。

俺がイメージする貴族が先導する行列は土下座ばりに頭を下げるとか、顔をあげてはいけない、見てはいけない、動いてはいけないとか言う様なイメージだが、この街では、そう言うことはなさそうだ。

俺たちの馬車は、ダリル辺境伯に先導され複雑な道を縫う様に進み、やがて辺境伯が住んでいるであろう砦に着いた。

「お父様!この街は道が真っ直ぐではなく、ずっと折れ曲がって最後は細くなっていました!もしや敵兵を撹乱する為ですか?!」

ティーモ兄様が、目をキラキラさせお祖父様に質問をする。

「そうだ。民の家々にも小さな窓がついていただろう?民達も侵入者に対し、あそこから矢や魔法を放ったりできる。砦にたどり着いた者は隊列を細められ、砦の壁に仕掛けられた投擲機で油をまかれ火の魔法で前から順次焼かれていくのだ。民の家々や砦への道の壁も対衝撃と耐火の魔法陣で強化されている」

「街全体が要塞なのですね!凄いです!」

ティーモ兄様が凄い凄いと感心していた。この砦に続く道の壁にも人の背より高めに穴が空いており、外からではわからないが、壁の内側に人の入れる幅があって、あそこから油や矢、魔法などを放てるのだろう。
【神眼】で街を見ると、道の至る所にも何やら魔法陣が組み込まれている。一つ一つの作用は小さいけれど、それを踏んだ魔法使いの技を徐々に封じる魔法陣だ。割とえげつない。気付いたら魔法が使えない仕様か。

魔物と言うより対人戦の作りの街だな。今は戦がない様だが、昔はそれなりに侵略戦争があったのであろう。

砦に着くと、俺たちは馬や馬車から降り、馬は厩舎へ、馬車は倉庫へと運ばれて行き、俺たちは砦の中に案内された。
俺とお祖父様、母様、ティーモ兄様は、この地の領主たるダリル辺境伯に案内され、他の護衛役や従業員役の一族の方々とは別々になった。最初は護衛役の方々は離れるのを渋っていたけれど、お祖父様が問題ないと言ったので不承不承ながら別室に案内されていった。

さらに、俺とお祖父様、母様とティーモ兄様とわかれ、母様達はダリル辺境伯の奥方とお茶を、俺たちは早速糞女神の教会の状態を見ることにした。

裏の出口より、お祖父様が駆るグラニに乗せてもらい(尻が痛い…)今は封鎖されている教会へと向かった。まだ朝の早い時間なので、途中に簡易屋台などの市が建っており、人々が新鮮な魚介や肉、野菜などを求め群がっていたのをみて、お祖父様に後で見たいです、とおねだりをして許可をもらった。

ダリル辺境伯に、

「孫のお願いを聞いてくれる優しいお爺ちゃん」

とか冷やかされていたけれど、お祖父様はどこ吹く風だ。お祖父様も母様もあまり顔の変化がないので、表情からは感情は分かりづらいが、今は不快な感じではないというのが伝わってくる。ダリル辺境伯とは気心の知れた関係なのであろう。

人が群がる市を尻目に進むと、やがて色ガラスで装飾された一際美しい一軒の建物が現れた。結構な広さだ。あれが件の教会か。

警備の為か兵士が2人門に立っていた。
ダリル辺境伯が「よっ」という軽い感じで手を上げ、兵士たちもそれに応え敬礼し門を開けてくれた。

教会を【神眼】で見ると、黒い煙の様なものが天に向かって伸びている…封鎖されているのにまだ何か良からぬものがあるのか…?

▼美の女神【エレオノーラ】を祀る神殿

※御神体の【エレオノーラの像】に精霊の子の身体が使われ【エレオノーラ】へ魔力を供給している。

「お祖父様!!」

「どうした?ナユタ」

「この中にある糞女神像の中に俺と同じ…いや!精霊の子の身体が生きたまま入れられてます!!」

「「なんだとっ?!」」

お祖父様が、

「ナユタは此処で待っていなさい」

と言い馬から飛び降り、ダリル辺境伯と共に門にいた兵士を連れて教会の中へ入って行った。そのうち固い物が破られる音が聞こえ、しばらくすると兵士たちの悲鳴と嗚咽が聞こえてきた。

気になって扉を開け覗き込むと、

「こっちに来るなっ!」

と怒られた。お祖父様が乗っていたグラニは何かを察したのか、俺の服の襟首を優しく喰んで門のところまで戻って優しく降ろしてくれ、俺を守る為か行かせない為かわからないが、自身の前脚の間に挟み込んだ。

暫くして出てきたお祖父様達は、不快な匂いを放ちながら、魔力を供給していたと思われる生きている精霊の子を抱えて出てきた。

とりあえずお祖父様達の不快な臭いを浄化で消して、状況を聞き出すと、どうやら像の上の方に投げ込み台があり、そこから精霊の子を入れていっていたみたいで何層にも積まれた精霊の子たちは、最下層はすでに白骨化していたそうな。間は…兵士が悲鳴をあげるくらいなので割愛する。

それらをお祖父様達は、其々苦手な火魔法でなんとか荼毘にし、出てきたそうな…。

お祖父様達を呪うのも飽き足らず、精霊の子まで…なんと言う悪鬼羅刹の所業か…

「俺たちはなんて物を受け入れていたのだ…」

「こんな悍ましい物が街中にあるなんて…」

兵士たちは顔を青くさせ呆然と呟いている。

「ナユタ…手間をかけるが建物の分解と浄化を頼みたい」

「はい」

ダリル辺境伯は大きめの木の板と書くものを持って来させ、教会のやったことなどを書き込み始めた。どう言うことをしたか書いたものを教会跡地に置く様だ。

(収納、使える資材に分解…ついでだから浄化もかけよう…浄化…)

解体スキルのレベルが上がり、分解スキルが使える様になっていてよかった。

無くなった上物の跡地にダリル辺境伯が立ち、土魔法で土中を混ぜ返している。すると数多の骨が出てきた。ダリル辺境伯は怒っているのか、土を蹴り上げていた。
辺境の地でコレである。もっと大きな都市では一体どうなっているのか考えるのも恐ろしい。

一応積み上げられた骨と、土地自体にも浄化をかけて、木材やガラスなど、素材は跡地へ積み上げておいた。壁材なども魔物とは思いたいが、何かの骨粉が練り込まれていたので分解して骨粉と土と分けておいた。

ダリル辺境伯にお礼を言われ、俺とお祖父様は、この世界の神とは一体何なのか。という疑問を残し元教会の跡地を後にした。

ダリル辺境伯は、兵士に応援を呼んでくる様伝え、それらに精霊の子を任せ、自身は未だ収監中の教会関係者に、尋問というお話し合いをする様だ。

お祖父様は不快な思いをしただろうに、俺が教会に行く前に言ったお願いに付き合ってくれるらしい。グラニを馬繋ぎにあずけ、採りたての野菜や鮮魚、肉が並ぶ市へと向かった。

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