• 異世界ファンタジー

幼児×家具

カラアゲサンド美味かったぞ!と職人さんたちに言われ、また持ってきますとお暇のご挨拶をした後、工房の前で、きちんと前足を揃えてお座りをして待っていた従魔たちを回収して地図に従って歩いてゆく。

トンカンと鉄鉱石を加工する音は薄れ、武器工房周辺とはまた違う、宝石工房やドレス工房などが現れ始めた。高級そうな通りにみえる。ドゥリンさんの工房はこの先の様だ。

道すがら、『白小麦粉と黒髭』というパン屋さんがあったので入ってみた。
大体ここフマラセッパのパン屋さんでは、銅貨一枚で、大人のにぎり拳大の雑穀や全粒粉のパンが3個ほど買えるのだが、この辺は高級なショップが多く顧客も富裕層が多いのか、このお店は銀貨一枚で、俺の頭の大きさほどの大きなパンが一つ買えるお値段だった。ただし他のパン屋とは違う真っ白に精製された小麦で、日本で見慣れたパンの色だったので思わず入ってしまったのだ。

ティーモ兄様が、ソワソワして店の前で店内を覗く。店の前は、小麦粉の甘い良い匂いが漂っているから気になった様だ。獣化して嗅覚が鋭くなっているだろうし、普段のパンとはまた違った匂いを感じているのかもしれない。

大銀貨二枚分のパンをどっさり買い、一つはスライスしてもらった。昨日のパンですが…ってオマケまでいっぱいくれたよ。ここまで豪快に白い小麦粉を使ったパンを買う人は滅多に居ないみたいだ。スライスしたパンはあとで炙って砕いた木の実とフォレストハネーをたっぷりかけて、アンダーザローズで待つ皆んなで食べようと企む。おまけのパンはパン粉にしてソースがいらない味濃いめのメンチカツとか作ろうかな…ソースもいずれは作りたい。
母様も柔らかそうな小さなパンを何個か見繕って自分で楽しそうに購入していた。母様は獣化して自ら狩った魔獣を商業ギルドで売り、代金をいくばくか受け取っていたのだ。母様が購入したパンも俺の収納に入れ、笑顔の店主に見送られドゥリンさんの工房へ向かった。

パン屋意外にも、道すがらにある食料品店や母様が気になったアクセサリー工房などを冷やかし、ドゥリンさんの工房へ着いた。

「ドゥリンさん、こんにちはー!」

「おお、ナユタ。よく来たな。頼まれた品物は粗方できてるから確認してくれ」

ドゥリンさんの工房は、サンプルなのか貴族が好きそうな家具が並べられた店舗の奥にあった。

物珍しそうに母様と店内を見廻し、工房に入る。

まず目に飛び込んできたのがベットマットだ。同じ大きさのコイルを一つ一つ袋に入れて連結させてそれを上下ウレタンマットで挟んで更に羊毛などのマットを挟み布を巻いた物を説明をしたのだけれど、ウレタンみたいな素材があるのかは謎だが、どうやらそこは職人らしく|解決した様だ。

「そいつぁかなり良い。俺も自分の分を作ってみたがバネが良い感じの弾力だ。ウレタンという素材が分からなくてな。通気性も良いから、大海鳥の雛の弾力ある羽毛を詰めた物で代用してみた。試してみてくれ」

早速俺は母様の腕から飛び降り、ポスンとベットマットに埋もれた。確かに今までの板のベットにちょっとした綿を詰め込んだマットを敷いた物と比べたら、こいつはかなり良い。母様も気になったのかボスンと倒れ込んできた。母様が倒れ込んだ衝撃で俺が弾む。
工房の中だというのに、なんだか可笑しくなってしまって笑いが止まらなくなってしまった。母様も可笑しくなったのか珍しく口を開けて笑っている。

「ドゥリンさん、このベットとっても気に入りました。何個か作ることは可能ですか?」

「ああ。構わない。この製法を無償で教えてくれたナユタだ。いくらでも作ってやるさ」  

ノーリさんの刀と同じ様に、製法を無償で伝えたのだ。商業ギルドで製法を登録しようと言ってくれたけど、元の世界の技術で俺が設計したわけじゃないし、記憶も朧げだ。そんな朧げな物で品物を完成させたのは、やはり職人の技量だと思うし、これからどんどん良いベットマットが生まれると良いなと思ったから登録は無しにしたんだ。

とりあえずあと5個ほどドゥリンさんにお願いして、ミニチュア家具が並べられたテーブルへと案内された。

アンダーザローズに持って帰る分には、普通の家具の大きさでも大丈夫なんだけど、つい持ち出しやすかったミニチュア家具を見せてしまったので、そのままミニチュア家具の納品となった。けどこれがまた凄いの一言に限る。

昔博物館で見た、平安時代から江戸時代までのお姫様の雛祭りの道具を思い出す。本物がそのまま小さくなったかの様な雅やかな漆塗の家具や、陶器製の柄の入った食器が素晴らしかったが、このドゥリンさんの作った家具たちも負けずとも劣らず素晴らしかった。

注文通りの、明るめの木色に飴色のニスが美しいシンプルなダイニングテーブルなどの家具。小さいながらも美しい紋様を描く絨毯に、ソファーセット。クッションやカーテン、ベットシーツまで何点か用意してくれた。

ありがたいことに、彫金師のイーヴァルさんや、木工職人のヨーゲルさんも力を貸してくれたようだ。

何度もお礼を言い、500万lbほどの対価を支払い、ドゥリンさんの工房を後にした。

お昼はすっかり過ぎてしまったけど、これから商業ギルドで調味料の使い方のついでに、試食でもしようかと色々と算段をつけている。

気になったお店で色々と物色し、細々とした物を買いつつ、ちょっとした屋台でつまみ食いをしながら商業ギルドに向かった。

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