• 異世界ファンタジー

幼児×夜のオークション

商業ギルドで、夕方のオススメのオークションへのアクセス権を100万lbで購入し(取るとこはしっかりと取られた)、その代わりまた大勢いる所で変な輩に目をつけられたらたまらんのでどうにか出来ませんか?って訴えたら、特別に個室を用意してくれた。
商談の部屋は個室を求めた人達で既に埋まっており、他に使用してなかった空部屋しかなく家具なども入っていなかったが、俺が浄化をかけて副ギルドマスターお手製の高級そうなお絨毯を何枚かかさねて、そこに座るスタイルで視聴する感じになった。何個か収納してたクッションを取り出し居心地の良い空間へと変える。
アンダーザローズに残してきた人達には、収納バックにたっぷりと食べ物を入れてきたけどちゃんと食べれているかちょっと心配しつつ部屋を整える。

ついでに副ギルドマスターおすすめのご飯は、ギルド職員さんが出前で届けてくれる事になった。うん至れり尽くせり。

対外的に、冒険者ギルドより高品質な商品を納品してくれる商業ギルドのお得意様で通ってるみたいだ。
実際は、今回のオークションの売上が良かった事への特別待遇で、ギルド職員にも多少お小遣いが出るようだ。ギルド職員さんが皆、良い笑顔で対応してくれる。
俺も調子に乗って、ご飯を届けてくれるギルド職員さんに、残ったお金は皆さんの酒代にでも…と多めにお金を渡しておいた。

(はっはっはっ。人間大金を手に入れるとこの幸せを人様に分けたくなってきますなぁ!)

『那由多…アレみたいです』

(アレ?)

『…え〜っと…そうこれこれ。キャバクラで会社のお金使って散財する社長!』

(はい!アウトーー!それ言ったらダメなやつ!)

確かに前働いていた会社の社長は、接待費として会社の資金で若い女に貢いでたよ!それと一緒にされた俺の心は、スルメイカより干からびたわ。
心を萎えさせる天才ツクヨミのツッコミで、せっかくの俺の左うちわ気分が消えてなくなった。

『おや?何か間違っていましたか?』

(間違いというか何と言うか…近からず遠からずというか…)

俺の気落ちした気配を感じたのか、お膝抱っこしてくれてる母様が、頭を撫でてくれた。母様のふかふかなお腹にもたれ、それに甘える。

『すっかり甘えん坊さんですね』

(まだ3歳だから良いんですー)

人の姿の母様はちょっと気恥ずかしいが、ライカンスロープ化したふかふかな母様とは結構スキンシップをとっている。母様もそれを察してるのか、俺を存分に甘やかしてくれた。

やがてスクリーン代わりの魔道具がゆらめき、オークション会場の中継が始まった。商人達の熱い戦い《バトル》を観る。昼間のオークションとはまた違う空気感だ。チラチラと映る参加者たちに、仮面をつけた人達も多くいた。キラキラとド派手な格好の人がやけに映りこむ。

「キャウ?(随分、仮面をつけた方がいらっしゃいますね?)」

「ガウ(あれはお忍びの貴族や、顔が割れたら良くない方々だな)」

「でも顔が隠れていても鑑定されたらわかるのでは?」

「あの仮面は、認識阻害をする魔道具です。普通の鑑定スキル位では見破れませんわ。鑑定スキルでも叡智の瞳クラスでないと見破れないと思います」

「ガウガウ(叡智の瞳など、この数十年持っている者は現れてはいないがな)」

なるほど。ちょっと試したけど俺には丸見えだった。一番目立つ男性はオストハウプトシュタット国の王様の弟だったよ。
他の鑑定士だとわからないのか…こんなに派手なら身近な人にはバレてそうだけど…

そこからセリが怒涛の如くはじまった。

昼間のオークションではじっくりと商品を観せる演出があったけど、夜のオークションではそれがない。
完全なる鑑定スキル頼みで、鑑定スキルを持たないでこの場に来る事はないのだろうなと思ったけど…
粗悪品やガラクタも多いが、そんな物も高額で売れていた。
そういう物を高値で競るのは殆どが仮面をつけた人達だった。ある意味、お金を使う事を楽しんでる風にも見える。このオークションを盛り上げているのかもしれない。国のイベントを盛り上げようとする、俺《小者》とは違う、本物の金持ちの金の使い方と言うのを観てしまった。

しばらくすると控え目なノックが聞こえ、入る様に促すと両手一杯食べ物を抱えたギルド職員さん達が夕飯を届けにきてくれた。お礼を言って、ギルド職員さんを巻き込み、前にレッサートレントで作ったちゃぶ台を広げ、みんなで夕飯を食べながらオークションを観る事になった。


どこそこの女王がつけたガラス玉だとか…千年に一度しか取れない幻の実だとか。
中にはちゃんとした絵画や壺などがあり母様が、素敵だわぁって、言っていたティーセットで競りに初参加してみたけど、早すぎてあたふたしてたらすでに終わっていたりして、競りについていけなくて、ギルド職員さんに励まされたりした。

そんな楽しい夜のオークションはお開きになり、商業ギルドの裏口から、ギルド職員さんに今日泊まる宿へ案内され部屋へと通された。
商業ギルドで用意してくれた宿は、従魔も一緒に泊まれる清潔で感じの良いお宿だった。

程よく疲れた身体を、ベッドに預け眠りに身を委ねる。その夜、オークションの競りに参加するけど一個も落札出来ない夢を見た。何てこった。

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