• 異世界ファンタジー

幼児×オークション

⭐︎近況はルビが入れられませんので安心のルビ無し仕様です(*´꒳`*)お楽しみ下さい。

※ルビ無し


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 しばらくオークションを楽しんでいると、遂に俺が出品したアンダーザローズの貨幣が、一枚ずつ渋い革張りの見事なケースに入れられて映し出された。

 黒いビロード素材の布に乗った、磨かれたのかキラキラ光る硬貨たち。右から順に銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨と並んでいる。
 カメラワーク?も、舐める様にトラックアップから〜の上手から下手にかけて〜のじわパンで、じっくりと硬貨を魅せてくれる演出が入る。

 本会場の観客たちも息を呑み、会場に映し出されている大きなスクリーンに釘付けになっているのが見て取れた。本会場の参加者には出品される品のカタログが事前に配布され、その後各地の参加者に渡されているそうだが、今回俺が出品した貨幣は、オークション出品登録がギリギリすぎてカタログ印刷に間に合わず、副ギルドマスターが言うには、目玉商品とかシークレット枠みたいな色物?扱いになったみたいだ。

 やがて本会場は盛り上がり、カメラ?は観客をパンし悲鳴を上げる者や歓喜する者、愕然とする者、じっくり品を見定める者など見てとれた。

 カァーーン

 と、ギャベルが会場に響き渡り、オークショニアの声が響き渡る。

「紳士、淑女の皆様!本日のメインエクジビット!この度、我が国のオークションでも見た事がない程貴重な、古代!幻の城郭都市の硬貨!全種の正真正銘本物のローズコインが美しい状態で出品されました!」

 会場内は驚きに包まれ、歓声がわき上がる。

 オークショニアを映していた映像が硬貨に移り変わり、スタッフなのか白い手袋をはめた手とコインが映し出される。
 コインはケースから出され、クリスタルの板に丁寧に挟まれ立てられた。

「先ずは銅貨から!」

 クリスタルに挟まれた銅貨が、回転台に乗せられ裏表ゆっくりと回転しながら映し出される。

「美しき花には棘がある…表には麗しきイバラの女王の横顔…そして裏には1本の薔薇とローズ城が刻印された銅貨…数多の鑑定士の手を渡り本物と証明された硬貨です!とても一万二千年前の品とは思えない輝き。さて皆々様、ご準備は宜しいでしょうか?」

 多分、鑑定スキルを持っている人々用の時間だったのだろう。硬貨をじっくりと180度映したらいよいよ競りだ。

「先ずはリザーブプライスからのスタート!50万!」

「60!」

「70!」

 早い。とにかく早い。静まった会場でどんどん手が上げられ価格が釣り上がる。若干失速するとオークショニアの絶妙な煽りが入る。

 お前らヒヨりすぎだろ?ビビって股間が縮んでるのか?(要約)

 その中途半端に上げた手のお前は空想の母ちゃんの乳でも揉んでいるのか?(要約)

 みたいな…。余りにも下品な言葉で心配したけど、それを見ていた母様は、気にしてないみたいで良かった。むしろお祖父様が、ウヘェって感じの顔をしてティーモ兄様の耳を器用に獣の足で塞いでいた。ティーモ兄様はキョトンとしていたよ。
 煽られた買い手は逆上したのか、さらに値段を釣り上げる。

(こわ!100万超えた…え?銅貨だよ?100lbだよ?)

『あのオークショニアかなりの手練れですね。このオークションを完全に支配してます。良かったですね那由多。手練れのオークショニアに進行してもらえて』

(良かったと言うか怖いよ…)

 俺がいる会場でもオークション参加者がいるのか、静かな闘いが繰り広げられていた。
 そして俺たち…

「あれは那由多がアンダーザローズの都市で使ってる硬貨では?」

「凄い価値がある硬貨だったんだね」

 とか小さな獣語で会話してる。俺も知らなかったけど、そうみたいです、と返しておいた。俺が提供したってモロバレだよな。
 かなりのマニアアイテムらしく、マニアではない由緒正しい魔法騎士家系生まれなお祖父様も、アンダーザローズの硬貨がこんなに価値があるとは思っていなかった様で驚いていた。

「192!192!!」

 オークショニアが数字を声高に叫び、ギャベルが打ち鳴らされる。100lbが192万lbで落札された様だ。何が何だかわからない。隣の副ギルドマスターが、片手で小さくガッツポーズをしていたのを見てしまった。
 もしかしてお任せしたリザーブプライスは副ギルドマスターが設定したのかも知れない。リザーブプライスは物の価値がわかってる人でも難しい。高くても買い手がつかないし安くても価値が下がり想定の値段より安く買い叩かれてしまう。ガッツポーズから察するに、今回は主催の商業ギルドにとってハイエスティメートより更に高値だったに違いない。

 続けて大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨とオークションはオークショニアに煽られながらズンズンと進行していく。

 他のオークションでも思ったけど、競りが早い。考える暇もなく値段が釣り上がり煽られる。俺は結構のんびり屋だから、潤沢な資金がなければ競売は出来んな…と思いながら時の流れに身をまかせ、静かに白熱したオークション会場を視聴する。

 そして俺が出品した、最後の硬貨のギャベルが鳴り響いた。俺の出品した貨幣が大トリだったらしく、これでオークションは挨拶と他で開催されるオークションの宣伝をして閉会した。まだまだオークション会場内は、異様な熱気に包まれ興奮冷めやらぬ程だ。
 多分このオークション本会場にいる人々は、興奮が冷めやらぬまま、この後の闇オークションなど夜にあちこちで開催されるオークション会場に足を運ぶのかも知れない。

 横に座った副ギルドマスターはめちゃくちゃいい笑顔だし、商業ギルドスタッフたちの表情も明るい。

 この後、俺たちは総落札額と、聖水と焼飯オムライスのお話し合いもある。まだまだ商業ギルドにご厄介となるが、この場のオークション視聴はお開きになった。ギルドの講堂で映し出されるオークションは、この昼間の大きなお金が動くメインオークションだけだそうな。

 あとは個々でそれぞれ希望のオークションアクセス権を購入して参加できる様で、俺も少し夜のオークションとか興味があったけど、とりあえず副ギルドマスターとのお話し合いをしに席を立った。

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