読んでくれた人がいる、というだけで、正直まだ実感が湧いていない。
『耳の欠けた谷』、レビューをいただきました。ありがとうございます。
この作品は『背中に降る星』と同じく、真白透夜さんの自主企画『しろやぎ星まつりコンテスト』に寄せた作品です。https://kakuyomu.jp/works/2912051602644902082
Sawatani-Asariさんは、この短編を黒曜石の欠片に例えてくれた。黒くて艶やかで、角度によって違う面が光る。中原純軽さんは、夜ひとりで見る上質なショートフィルムだと言ってくれた。男は叫ばない、泣かない、それでも全部受け取ってしまう、と。
書いてる本人がいちばん驚いている。僕は角度のことも光のことも考えていなかった。ただ、削って、削って、残ったものを置いただけだ。でも読んだ人の方が、僕より先にそれを見つけてくれる。これは何度読んでも新しい断面が出てくる話だと言われて、初めて自分が何を書いていたのか少し分かった気がする。ありがたい話だ。
短いやつだ。4000文字にも満たない。それでも書いてる途中、僕は何度も「これは長すぎるんじゃないか」と思っていた。何度も削った。削るたびに、まだ余っている気がした。最終的に残ったのが今の分量で、たぶんこれ以上は削れない。削れないというか、これ以上削ると、たぶん僕自身が何を書いたのか分からなくなる。
コズミックホラーをやりたかった。ラヴクラフトの、あの「人間の理解が届かない何かがそこにある」という感じ。でも触手も宇宙人も出さなかった。谷と、鈴と、ヤギがいるだけだ。人間の理解が届かないものは、別に宇宙の外側になくてもいい。隣の家の生活習慣くらい近くにあっても、たぶん届かない。
映像的には、デヴィッド・リンチを意識した。意識したというか、勝手に憑依してきた。何も起きていないのに不穏、という状態。畑と、ヤギと、鈴の音。それだけの画で、何かがおかしいと分からせたかった。おかしい理由は最後まで言わない。言った瞬間に、それはただの謎解きになる。
だから今回は、説明をほとんど書かなかった。何が起きたのか、何が正体なのか、読み終えてもはっきりとは分からないと思う。それは、余白のつもりだ。読者に手渡す分を、こっちで先に食べてしまわないようにした。ミニマリズムというより、まあ、節度を持たせたかっただけ。
読んでくれてありがとう。レビューもありがとう。また何か書きます。「おりひメエ」にも挑戦したいけどできるかな。
Sawatani-Asariさんホーム
https://kakuyomu.jp/users/Sawatani-Asari
中原純軽さんホーム
https://kakuyomu.jp/users/JeaNJeaNA
『耳の欠けた谷』
https://kakuyomu.jp/works/2912051603586778014