今、書いている長編ミステリーは(何度もこの話ばっかりですが)泥棒物ですので、「仮想泥棒ゲーム」と同様に錠前(鍵)のことを詳しめに書くつもりです。「仮想泥棒ゲーム」もそうですが、一人称ではあるものの、誰かに向かって書いているという形式ではなく、心の中の独り言が活写されている文体です。なので、あまり詳しい説明を書くことができません。それは主人公にとって「既にわかっていること」であり、自分に向かって解説する必要がないからです。これはけっこうわかりにくい内容になります。読者も知っている前提で話が進んでいくことになりますから。
しかし全編でそれをやると、錠前についてよく知らない人は付いてこられません。ですので、適度な説明を(心の中のこととして)描写する必要があります。あまり不自然になりすぎない程度に。そしてもし詳しい説明が必要なら、一人称以外のパートでそれをすることになります。三人称一視点というパートがありますから。そこなら、原稿用紙数枚分を割いて詳しい解説を書くことも可能です。ただ、長くなりすぎるとやはり読みにくいのですが。
もし一人称パートで詳しいことを書こうとすれば、「よく知らない人に解説しているシーン」を入れるくらいでしょう。でも、集団で泥棒をするときに、よく知らない人が混じっているはずはありませんから、これも詳しすぎる解説は不自然となってしまいます。結局のところ、泥棒側の立場で一人称小説を書くというのは、かなり無謀だということになるわけです(笑)。