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ある医療ミステリーについて

短編ミステリーを書くために、他の人の作品(短編の文学新人賞受賞作)を読んで研究していました。その中に医療を題材にした作品があったのですが、展開でちょっと気になることがありました。ある医者が、現場で患者の身に起こった不思議なことを他の人に聞かせて、謎を解いてみろ、という筋だったのですが…

・医者は状況説明の後、いろいろな質問に答えてくれます。で、「ここまで言えば、もうそろそろわかっただろう」という感じで進みます(注:そういう明白なセリフはありませんが)。ということは、そこが本格推理物の「読者への挑戦」が挟まるタイミングなわけです。
・そして解決編が始まるのですが…そこに何と「医療関係者でなければ普通は知らないであろう、専門的な医学知識」があって、初めて謎が解けるのです! 探偵役(話を聞いていた人)がその知識を出してきて推理を展開するのですが、読み手からすると「それ、解決編の前に提示してくれないとフェアじゃないよね?」ということになります。
・さらに問題があります。医者の話の中には嘘が含まれています。正確には嘘ではなく「誤認」ですが、作者はそれをあたかも叙述トリックであるかの如く説明しています。つまり、謎は患者の症状になく、医者の話にあったのです。するとそれも「アンフェアだろう」という感じがします。「患者に何が起こったか」の話をしていたはずなのに「語り手(医者)の話のどこに嘘(誤認)があったのか」にすり替えられてしまっているのですから。
・ちなみに医者の話が始まった時点で小さなヒントがあり、「実はそういうオチ(誤認)では?」と思いながら最後まで読むと「ああ、やっぱり」となって、ガックリしてしまいました。

たぶん、ミステリーを読み慣れていない人は「面白い」と思うのかもしれませんが、慣れていると叙述トリックを疑いながら読むので、「見え見えだなあ」と思ってしまうのですよね。その後にもう一つどんでん返しがあれば、まだなんとか納得できたんですけど。

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