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意外な犯人

殺人事件を扱うミステリー小説(長編)では、通常、意外な人が犯人であることが最後にわかります。探偵への依頼者が犯人という極端なのもありますが、多くは「序盤に登場して、探偵の協力者になる人物」が多いのではと思います。序盤に登場するのは「ノックスの十戒」に従うものでしょう(しかもこれ1項目ですよ)。そりゃ、後半突如登場した人物が犯人になったら、読者は推理できませんからね。でも、殺人事件以外なら? 例えば誘拐物だと犯人が序盤に登場することはなかなか難しいでしょう(倒叙形式なら可能ですが)。身代金を払う側に共犯者を忍び込ませるくらいでしょうか。

では、人捜しの場合は? その場合、そもそも「犯人」に相当する人物をどうするか。「行方不明者の居場所を知ってるんだけど、聞かれたら嘘を教える人物」になりますか。それなら「序盤に登場して、探偵の協力者になる人物」にすることが可能です。偽の情報で探偵を振り回せばいいんですよね。でも偽情報ばっかりだと疑われるので、時々本当の情報を探偵に教える。もちろん、他にも居場所を知ってる人物がいて、それと連絡を取りながら、行方不明者をどこか適当なところへ逃がしたりするんです。逃がした後で探偵が到着するので「確かにここにいたんだ!」てなことになって、探偵の信用を得るわけですね。

対して探偵の側は、失敗を重ねるうちに「どこかで情報が漏れてる」と気付く。そして協力者に偽情報を流すなりして、「犯人」を特定する、ということになります。(同じ手法が誘拐物にも使えるはずです)

ただ、既存のミステリー小説を読んでいると、「犯人」でありながら「探偵の協力者」になる人物が、「本当に犯人だったらこんな真に迫った情報を流さないのでは」というシーンに出くわすこともあります(もちろん、再読して発見するわけです)。とにかく、ものすごく協力的で、一歩間違ったら自分が犯人であるとその場でバレるかもしれない、というところまで協力するんですね。「作者は初めのうち、こいつを犯人する予定がなかったんじゃないの」と思うくらい。何となく不誠実なものを感じることすらある。でも、そうでもしないと「意外な犯人」にはならないのかなあという気がします。

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