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誘拐ミステリーを読む

誘拐事件が題材となっている、あるミステリー小説を読みました。20年以上も前の作品で、その作家の代表作とされているのですが、感想としては「もう一歩」という感じでした。別に筆者は書評家ではないので、この評価を信用していただく必要はありませんし、反論していただいても問題ありません。詳しい内容には触れませんが、もう一歩と感じた理由は「いろんな引き伸ばしが入っている」と感じたことに依ります。

しかし、それは誘拐ミステリー全般に関して言えることではないかと思います。誘拐に至るまでの経緯を詳しく書くのはいいでしょう。そこに物語性がありますから。しかし、いったん誘拐が起こってしまうと、どうなるか。(1)身代金またはそれに相当するものの要求が、犯人から被害者の家族にある、(2)身代金または(略)の受け渡しが行われる、(3)犯人は捕まるのか。この三つの出来事が語られることになるでしょう。以下、順番に見ていきます。

(1)昔からのパターンで、今でもそう変わらないと思いますが、犯人から電話で要求が入るわけです。このときに「誘拐された人を心配する家族の状況」「逆探知を試みる警察」などが描かれますが、これらは小説のみならずテレビドラマでも数多く描写されていて、こんなところを長々と読まされても退屈なだけです。「ものすごく奇抜な連絡方法」があったとしても、何十枚も書くようなものじゃないですよね。ちなみに、今は電話の逆探知は「一瞬」なので、誘拐犯にとっては不便な時代になったものです。
(2)受け渡しの瞬間は犯人が接触してくるのですから、警察側は逮捕のチャンスです。逆に犯人はそれを避けようと、巧妙な受け渡し方法を考えるのですが……それでも、たいていは「あっちこっち引っ張り回したあげく、警察をまく」という感じになります。その「引っ張り回し」が長すぎるとこれまた退屈なんですね。どこかのコインロッカーへ行けとか、ホテルの部屋に入れとか、車で延々と走れとか。4ヶ所も5ヶ所も回ったら「いつまで続くの」ってイライラしてきません? 作家はそこを退屈しないように懸命に書いてくださっていると思うんですが、その中でも「受け渡しのために走り回る人と、それを見守る警察の会話」なんかどうでもいい、という気がします。どうせワンパターンなんですから。
(3)成功させるのは特に難しくて、それでも「ご都合主義の展開」「警察が間抜け」という評価なるのが多いような気がします。たとえは2で書いた立ち回り先って、警察が張り込んでて、受け渡し人が去った後でも厳重に捜査するはずですよね。そこに犯人が事前に立ち寄ったことは間違いないんだから。それなのにみんな受け渡し人について行っちゃって、遺留品があるか確認もしない、というのはおかしすぎます。

ということで、今回読んだ作品ではやはり(1)(2)で引き伸ばしが行われていて、退屈したりいらついたりしました、もしかしたら、誘拐ミステリーは筆者の性格に合ってないのかもしれません。だって、書こうと思いませんし。

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