「仮想泥棒ゲーム」にせよ、ミステリーにせよ、最近気に入って多く書いているキャラクターがあります。特定の人物ではありませんが、「男みたいなしゃべり方をする女性」あるいは「中性的な女性」です。小説に登場するキャラクターとしては普通だと思いますが、今まで公開した筆者の作品の中に、そういうキャラクターはいませんでした。それは実は意図的でして、先に挙げた二つの性格の女性は、小説の中でとても使いやすいのです。能動的に動いて、あらゆる膠着場面を打開してくれるのですよ。特に、女性側から男性側にアプローチする場面で。男性の方を積極的にしなくていいから、楽なんです(笑)。ですからそれを封印して、使いにくい、動かしにくいキャラクターに動いてもらうという「文章修業」をしていたのです。
ところが、話をたくさん書いていくと、どうしてもキャラクターが不足してくるのですね。登場人物をたくさん出すと、性格が被るのです。もちろん、主要人物なんて5人もいればいいので、その人物の間で性格が被らなければ話としては成り立つのですが、それでも「いつも同じようなキャラクターが登場する」ことになってしまいます。そうすると、話の展開を読者に「読まれて」しまうことがあります。こういう性格の人物が出てきたら、こういう展開になるぞ、と。そりゃ、性格が似てたら展開も同じになりますよね。設定した性格を外れるような無理な動きをさせると、展開自体がと不自然になりますから。
そこで、キャラクターを増やすために、先に挙げた二つの性格の女性を導入しました。二つきりではなく、この中間段階がいくつかあるので、3種類か4種類くらいは増えましたね。さらに増やそうと思うと「女みたいなしゃべり方をする男性」あるいは「中性的な男性」ということになるのですが…こちらの二つは、困ったことになぜかギャグキャラクターっぽくなってしまうのですよ。筆者の個人的な感想かもしれませんが、小説に限らずマンガでも「オカマ」というのはほとんどギャグ要員だったと思うのです。少女マンタでは「女性のような外見の男性」が登場していい動きをすることもあるはずですが、小説では外見をいちいち描写できないので、そういうキャラクターを使っても効果が薄いのです。台詞だけだと、普通の男と違いがありませんからね。
ただ「男みたいなしゃべり方をする女性」と「女みたいなしゃべり方をする男性」をセット(ペア)にすると面白いかもしれないとは思います。それでも、いろんな「お約束」が登場するコミカルな小説になりそうですけど(笑)。