★本プロットは関守乾氏(
https://x.com/InuiSekimori?t=UdYb38zgIeRuRmFeWxsBtA&s=09)から頂いた命題「魔法少女くおん スプートニクの巻」のシナリオををキリトリトラベルのキャラクターで演じたらどうなるか?の回答として作成したものです。氏の素敵な原作は
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896553916より閲覧下さい!!★
・異質物「ロストスター・リゲインド」の力により現出した「ライカを乗せたスプートニク」が成層圏より地表に迫る
・敵がライカという犬の物語を持ち出し、冬壁を動揺させた事で、異質物の初期対応に失敗。
・秋塚咲良(あきさく)の「真理眼」によりモニタリング
・予想される被害の甚大さと、スプートニク内部の生命体、かつてライカという犬だったモノの「還りたい」「寂しい」「苦しい」「こんな目に合わせた人間が憎い」「けれど頭を撫でてくれた人間の腕の中に還りたい」感情を感知し苦しむあきさく。彼女の心身への負荷が激しく、これ以上はモニタリング出来ない。
あきさくを通じてライカの感情、声に触れ体が強ばる冬壁。
苦しみと愛憎と郷愁。自らの生まれた世界から切り離され二度と帰れない上、親に対して複雑な感情を抱える冬壁はライカに自身を投影する。
「首を絞められた苦しさを、目の前に迫る鋏の刃の怖さを、今でも忘れられない。
目を合わせずにお金を押しやってきた母親の疲れた顔を……自分で「縁」を切ったからもう会えない母親の顔を、覚えてる」
あの日泣いていた自分と炎に包まれる一匹の犬。どうして手にかけられようか。
・かつて宇宙で孤独な最期を迎えた犬に二度目の死を与えるべく死神の鎌を取る夏樫。普段通りの軽薄で妖しげな態度で、こともなげに。
「ほんならちょっと行ってくるわ、かわいい仔犬ちゃんとランデブーや」
冬壁が非難するのにもどこ吹く風。
・春咲紅葉(はるもみ)との手配でジェット戦闘機やヘリを利用して夏樫がスプートニクを撃墜する計画が着々と立てられる。
・夏樫は冬壁に参加するように言わない。
苦しげに眠るあきさくのそばで立ち上がれない冬壁の心情を知らぬ夏樫ではないが敢えて声をかけない。冬壁に自身のしくじりの落とし前を着けろとも言わない
・初めての事件での冬壁の様子を思い起こす夏樫。
世界を改変する仔猫の命を斬らず世界から切り離して隔離することを選んだ冬壁の甘さと優しさを知っている。
冬壁が旅を続けるならばいつかは選ばなければならない時が来る―片方を切り捨てて片方を守らなければならないことを。
だが、夏樫はそれを冬壁に無理強いする気はない。自分でそれを学ぶ痛みを選ぶことを急かさない。夏樫には真っ直ぐな冬壁に非難されても構わないだけの余裕がある。それは親のような真心でもあり、冬壁を自分の知る冬壁のままに閉じ込める傲慢さでもある。
はるもみは夏樫の様子から以上のことを推察する。
・出発の寸前、夏樫の目の前に冬壁が立ち塞がる。
「どーしたん冬壁ちゃん今さら。ウチをぶん殴ってワンちゃんを救いに行く気にでもなったんか?メイク直しするなら待ったるで、紅いお目めがますます真っ赤や」
泣き腫らした目元を見て挑発するように笑う夏樫。
その二重に赤い目で夏樫の視線を受け止め真っ直ぐに睨み付ける冬壁-口元を決意に引き結ぶ。
「違うわ……置いてくつもりならそれこそひっぱたたくわよ。
……わたしにはライカの気持ちが、少しだけ分かる。わたしがあそこで止めていたらライカはまた苦しまなくて良かったのかもしれない。
だから……わたしのこの手で」
彼女を助けること-この世界で今を生きている命と、過去から甦った喪われた命を天秤にかけることは出来ない。そう裁断し片方を切り捨てることは、神ならぬ冬壁には過ぎた行為であるのかもしれない。
しかし、それを誰かが-夏樫だとしても-代わりに何とかしてくれると思考を、決断を放り出す事を自分に赦せる程冬壁は器用ではない。
「ライカを-罪のない命を裁断することが罪なら……わたしがしなくちゃいけないのよ」
冬壁の言葉を受け止め、夏樫は心底嬉しそうに笑う。
「よう言うた。それでこそ冬壁ちゃんや。どこに出しても恥ずかしくないウチの相棒や」
夜明け前の青い闇。その西の空を、時ならぬ明けの明星が狂おしげに燃えながら落ちてくる。
「付き合うで、冬壁ちゃん。いこか、哭きながら還ってくるお利口さんをウチらで迎えに」
差しのべられた手を取り、暗い滑走路に歩を進める冬壁と夏樫。
一機の軍用機で超高高度まで上昇し、青黒い高空に身を踊らせる冬壁と夏樫。
夏樫は「物理法則を歪めて」浮遊し、
冬壁は直近の冒険で試練の果てに獲得した鋏の複合体で形作られた黒い翼【羽鋏-シザー・フェザー】を背中に出現させ、「重力と空気抵抗を切り裂いて」飛翔する。
白黒の死神と黒白の天使が燃え盛る流星に接近する。
スプートニクとの相対速度を合わせるため、夏樫が冬壁を抱えて姿勢制御バーニアめいて支える
「前から腰に抱きつく必要あるわけ!?」
「せやかて背中には冬壁ちゃんのご立派!な、ららら天使のハ・ネ♪が生えとるやんかー。
それに、ウチが後ろから見とらんでも、出来るやろ?冬壁ちゃんなら」
「……当たり前でしょ!」
へその辺りに夏樫の温度を感じながら、冬壁は「絶対断裁の太刀斬鋏」を振るう冬壁。スプートニクの燃え盛る外殼が切り開かれ、炎熱に包まれ身を捩る宇宙犬「ライカ」の姿が覗く。業火と暴風で聞こえないはずの叫びが冬壁に届き、決意を揺さぶる。
かぶりを振り、「相対裁断の糸切鋏」を向ける。異質物によって歪に繋がれたライカのかりそめの命脈を感じ取る。
焼け崩れ/再生を繰り返すライカの狂おしげに光る二つの目を見つめながら、冬壁は静かに語りかける。その言葉はライカ以外の誰にも、視聴者にも聞こえない。
(夏樫はあえて聞かない)
そして糸切鋏が静かに閉じられ、ライカの歪な生命が断ち切られる。
それ以上再生する事なく、灰になって崩れるライカ。 ライカの心拍数がフラットラインになったことを察知したあきさくの体が一度震え、か細い悲鳴を上げ、小さな頭ががくりと落ちる。
コアであるライカを喪失したスプートニクは見る間に崩れ落ち、薄明るい空に一条の赤い軌跡を刻んで燃え尽きる。
黒い羽鋏を羽ばたかせながら着地し、力なく膝をつく冬壁。羽毛のように鋏が舞い散り、天使から一人の震える少女に戻る。
高空の風と熱で流れ、散っていた涙が頬を伝う。
ライカの命を断ち切った感触に震え、啜り泣く冬壁と、彼女を抱きしめて「よー頑張った。あの子の魂は解放された……冬壁ちゃんのおかげでな」と囁く夏樫。
その表情は影が落ち窺えない。冬壁の成長を喜んでいるのか、それとも……?
昇る朝日が、二人と風に漂う灰を照らし出す。
明るさを取り戻す空の青に、かすかに遠吠えが響き、遠ざかる。
【リトルスター・スプートニク・リエントリー 完】
おまけ
【羽鋏-フェザー・シザー】
冬壁が能力に覚醒直後、制御出来ずに暴走させた「鳥や蝶のように飛翔する鋏」を制御・応用し、多数の鋏を複合させて形成する黒い翼。重力・空気抵抗・一部物理法則の縛りを「切り裂いて」飛翔する事を可能とする。
メディアによって「マイクロサイズの鋏が集合し黒い天使の羽の形状になる」「巨大な鋏が冬壁の背中の左右に浮かんで翼として機能する」と描写に違いがある。