第二章は作者には複雑すぎて難航してます。
舞台となるフリディアの設定の箇所を試作してみましたので公開します。
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さて、ここでフリディアの歴史について語っておこう。
百年前までフリディアは一帯に散らばる軍閥の連合体でしか無かった。
ミカドを中心として政治を代行する幕府が実権を持つ、つまりは前世の日本を彷彿とさせる体制である。
この体制は環境的な影響が大きい。
北西に巨大湖、東に巨大な山脈が存在し、低緯度な寒冷な地域。
要するに豪雪地帯が約束され一年のうちのかなりの期間は雪に閉ざされている。
一般に寒冷地の生物は巨大化する傾向が高い。
体積に対して表面積が小さいため、体温の維持に有利となるためだ。
このように、寒冷地ではデカいほうが向いている。
また寒冷地の野獣は食糧難のため魔獣化しやすい。
魔獣は身体強化度から、なれなかった個体よりも生存しやすい。
ゆえに魔獣の生息数は王国などに比べて極めて高い。
一方、人間はどうか?
複数体の魔獣と対峙することになれば魔術攻撃の被弾は避けられず、魔術師の生存性は極めて低い。
確率によって魔術師適性をもつ人間は減少せざるを得ない。
そして人間はとにかく数が多いことを前提としなければならない自然界の弱者だ。
大型化は食料の問題から数の有利とのトレードオフとなり絶滅を早めるのはここでも同じだ。
フリディアでは国家を維持し続けるために、魔動具技術に全てをつぎ込んだ。
魔獣の討伐のみならず、食料生産、住居のすべてを魔動具に依存する国となった。
そして徒人のみで魔動具武器により魔獣を討伐する一族は武士階級として国家の重鎮となった。
さて百年前にこの体制は大きく捻じ曲げられることになる。
それを企んだのは王国で、2つの目的があった。
魔動具技術とフリディアの西に位置する共和国に対する防波堤である。
王国はわざとフリディアの武士階級に対して挑発を繰り返し、暴発を狙った。
挑発の内容はフリディアの「一部の地域」に対する法外な支援という形で行われた。
これはフリディアの政治体制バランスを大きく崩すほどのものであった。
国内統制において、一部地域は政権のコントロール下から外れだす。
中央よりも王国を支持しはじめたということだ。
これを経済的侵略と中央を支配する武装勢力は王国への侵攻を実行し、王国の都市に侵攻する。
しかし当時でも国力差は優に百倍を超える。数ヶ月でフリディアは逆に制圧されることに終わった。
その後は植民地化?そのような短期的な視野で悪辣な王国は動かない。
政治体制はそのまま、王国は食糧を始めとする資源や医療や教育など膨大な援助を投入し続けた。
講和条件は、これらの支援を受け取ること・・・それだけ。
それによりフリディアは瞬く間に高度成長を遂げ、食糧生産量もかっての三倍に増加。
そして人口は七倍に増加する。
それが何を意味するのか理解したときに、すでに罠の戸は閉じられていた。
いや戦う以前、支援を拒否できなかった時点で勝敗は決していた。
提供される資源を絶たれれば、戦わずしてフリディアは滅ぶ。
これを称して王国の鎖と呼ぶ。
こうしてフリディアは王国の魔動具工場とならざるを得なかった。
古道も通らない僻地では交易手段すらも握られているという詰みっぷりだ。
ミカドという精神的支柱があり、ゆえにゲリラ化する可能性は低いと踏んでの凶行である。
これらは王国の学院の「授業」で語られる史実であり、「王国の鎖」は公文書にもある王国側の用語だ。
自国の謀略の手口すらつまびらかに教育していくのだから、全くもって王国は恐ろしい。
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この百年の鬱屈を煮詰めた人族国家なので、諸々の思惑やら伏兵やらが絡み合うのは・・・まあ察してください。
もう、第三章にまたがって大混乱。