七月二十日(水曜日)晴れ
水曜日と金曜日の給食はご飯が出る。アルミカップに入ったご飯は、炊き立てではないが、発砲スチロールの箱に入ってくるので温かい。四十人分のご飯を運ぶ給食当番は大変だが、週替わりなので誰でも運ぶことになる。
今日もご飯の日だ。
もちろん、ぼくもご飯は好きなのだが、おかずが問題なのだ。パンの時にはあまり出ない魚料理が、ご飯の時には多く出る。
そして、今日も魚料理『サバと玉ねぎのチーズホイル焼き』が出る。ダメだ、食べられる気がしない。サの字も食べられない。しかも、ホイル包みで配られるので、量を減らすこともできない。もう、残すしかない。
しかし、給食係の「いただきます」のあいさつ前に、
「今日の給食は残さずに食べましょう。残す人は、理由を教えてください」
と先生から話がある。
時たま「残さないように」と言われるが、今までは残さず食べられていたので問題なかった。
今日は、問題大ありだ。魚料理は嫌いなので絶対に残す。
給食の時は、となりの席と向かい合わせにして、前から順番に四台をくっつける。ぼくのとなりは八島さんで、前の席の粟倉くんと渡辺さんが一緒になる。三人のうち誰も、サバをふたり分食べたいとは言ってくれなかった。
他の『ほうれん草と大豆の和え物』も『コンソメスープ』も『牛乳』も食べきった。ご飯に『コンソメ』と『牛乳』という組み合わせでも怪しいのに、そこにサバはありえない。
すでに食べ終わった人は、片付けの合図を待っているが、食べきれない人も何人かはいるようだ、
「食べ終わった人は片付け始めてください」
先生が言った。
永井さんが先生の席に行った。
「……」
「もう少しがんばって、食べてみようか」
何か話したようだが、食べるように言われたらしい。声が小さくて何を話したかは聞こえなかった。
ぼくも、残していいか聞きに行こうかなと考えていたら、飯村くんが給食のおぼんを持って先生の席に行くのが見えた。
「先生、お腹が痛いので残していいですか」
「もう少しがんばって、食べてみようか」
今度はやり取りが聞こえてきた。また、食べるように言われている。
次は斎藤さんが給食を持って先生に聞きに行った。
「先生、お腹が痛いので残していいですか」
「もう少しがんばって、食べてみようか」
また、食べるように言われている。ぼくもこれ以上は絶対食べられないので、先生に言いにいった。
「仕方ないですね。片付けてください」
先生は、ぼくの話を聞いて納得してくれた。クラスのみんなは、ふしぎそうな顔をしてぼくを見ている。
その後も何人か聞きにいったが「もう少しがんばるよう」言われるだけだった。
先生の目の前に座っている落合くんが「魚嫌いだから残していい」と聞いて「片付けなさい」と言われていた。
ぼくは「お腹が一杯なので、残していいですか」と聞いたのだ。