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第一回ドゥッダンツカドゥッドゥン大賞 少女の15年後篇 結果発表

 実は「第一回ドゥッダンツカドゥッドゥン大賞 少女の15年後篇」という自主企画を主催していました。

 https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054894025871

 9作品集まりました。ありがとうございました。
 よし。
 それでは結果発表やってくぞオオオオ(企画終了から10日くらい経ってしまいすみません)



★★★第一回ドゥッダンツカドゥッドゥン大賞 少女の15年後篇 結果発表★★★



 おもしろおかしく結果発表しようと思ってたんですけどうまくいかなかったので今回は普通に発表します。まずは特別賞から。
 なぜ大賞を後回しにするかというと、この文を書いてる時点で大賞作品を決められていないからです。2作まで絞ったけど死ぬほど迷ってる。
 ではいきます。
 あ、ドゥン賞参加作品のネタバレはガンガンやっていくので注意してください。
 いきます。

 ★特別賞その1★

 改めて言いますが、小さな女の子が成長し立派な大人になるさまが描かれてるのって、いいですよね。僕がそういう物語に期待するもののひとつに「未来への希望感」というのがあります。大人になるって楽しいことだな~とか、大人になっても年を重ねることは嬉しいことだな~とか、そういうことを女の子が思ってくれていると、じんわりとして、ほっとします。
 僕の心をあたためてくれたこの作品に、こころあたたまり賞を贈ります。

 ★こころあたたまり賞★

 井守千尋さん『みどりクエスト』
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894384429

 主人公・碧子さんをかばって亡くなったはずの双子の姉から、毎年励ましのメールが届くお話。
 こう書くと若干ホラーめいてるのかな?とか一瞬思いますが、ひたすらあたたかい手触りな物語になっているというバランス感覚がすごいです。たぶん最初からメールの主が誰なのか薄々わかるというのもあるから、ホラーにならず、優しい雰囲気が醸成されてるんだろうなあ。勉強になる。
 みどりさんが亡くなっているという不幸はあるけれど、この物語と文章は祝福に満ちていると感じました。ポジティブな言葉ってたまに食傷気味になっちゃうことあるのにそれがなかったです。小説にするにはありきたりかもしれない人生の話をここまで特別にしているのは、みどりからのクエストメールというのを発明し、前向きな言葉本来の力を引き出せる、井守さんの力量ですね。おもしろかったです。

 では次です。

 ★特別賞その2★

 少女が大人になるということは、年月が経つということです。その十五年くらいの間、失っているものもあると思います。失くしたものを振り返って、センチメンタルになることもあるでしょう。その時、彼女は感慨深げに「ここまで来たんだ」と複雑な表情を浮かべます。
 これは、なんかそんな感じの、どこかやるせないような気持ちを思い起こさせる作品に贈る賞です。

 ★やるせな賞★

 B-taleさん『The Curious Case』
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894113778

 本を読むのが大好きな麻弓さんが、図書館で解子さんという司書に絡まれるお話。
 まず本作は、キャッチコピーがいいですよね。世界は広いぞ、中学二年生! これだけで、そのセリフを言った側と言われた側の関係性がなんとなーくわかるっていうのがある。
 解子さんと麻弓さんの関係が好きです。かぎろ杯(当企画の前身となった企画)の時も思ったんですけどびているさんは女子ふたりの関係を描くのが巧い。中学生時代の麻弓さんと解子さんの会話をずっと聞いていたかった……。
 麻弓さんの最後の一言が印象的でした。大人になった少女にはああいうことを言ってほしいですね。解子ちゃんにいくら外の世界を見てきたことを話しても、あの頃の解子さんにはもう会えない。やるせないね。面白かったです。ベンジャミン・バトンよく知らないので知ってたらなんかもっと他の魅力にも気づけたのかもなとも思いました。

 次です。

 ★特別賞その3★

 少女の15年後。この要素を素直にそのまま使ってくる人もいれば、何か捻ってくる人もいるだろうなと思っていました。実際、いました。捻ってくる人。
 意外な方向へ展開し、僕を驚かせてくれたこの作品は、ショートショートのお手本といっても過言ではないと思います。

 ★かぎ新一賞★

 てこ/ひかりさん『デジタリアン』
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894117840

 幼くして亡くなった娘を、人工知能として再現しようとするお話。
 1500字もないのに深い。ラストシーンが好きすぎる。まず、少女の15年後を書いてねって言われた時に、亡くなった5歳の女の子をAIとして甦らせて20歳の姿に会う話にしようっていうその発想がすごい。しかもそれだけじゃ終わらない。デジタルの海へ旅立つシーンはとてもSF感に溢れてて、壮大な気持ちにさせられました。1500字もないのに(2度目)。面白かったです。

 次です。

 ★特別賞その4★

 少女の15年後という要素を主軸に据えてほしいなみたいなことをレギュレーションに書いた気がするんですが、今から特別賞を贈る作品は、少女の15年後要素を主軸にしてる感はどちらかといえば薄いです。でも絶対これには賞あげたい。何なら大賞にしようか最後まで迷った。というか未だにこれが大賞でもよかったかもしれないなって思ってる。
 そんな心境がありつつも、大賞作品はひとつと決めているので、本作にはこの賞を贈呈いたします。

 ★第一回ドゥッダンツカドゥッドゥン大賞・オルタナティブ★

 あすぱらさん『大凶美幸と愉快などうぶつ達 - king of children-』
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894527364

 動物が大好きでかつては「動物の王」と呼ばれていた大凶美幸さんと、彼女と離れ離れになってしまった長谷円さんのふたりによる、友情のハチャメチャギャグストーリー。
 プロフィールによると、作者のあすぱらさんは小説を書く時に大抵お酒を飲んでいるそうです。絶対これも酔いながら書いたでしょ(決めつけ)。頭のリミッター的な何かが外れてないとこれは書けないと思う。
 まあでも最序盤は穏やかでした。可愛らしい幼少時代の思い出と、別れの記憶。普通にしんみり系な感じが出ています。たぶんこの時点ではあまり酔いが回ってなかったんでしょうね。しかし子供時代の描写が終わると早々にギャグが始まります。
 本作のギャグは本当に突き抜けています。勢いがすごい。各場面において実現可能な最大風速だけを出してやるという気概を感じる。ハチャメチャではあるんですが、ハチャメチャなりの理がないとここまで笑えるものにはならないと思いました。本作で一番好きなギャグは「何!? ヴァンピィちゃんだと!? なら爆発する他有り得ん!」です。リアルに「何でwwww」っつってました。あと海老ぞりブーメランも好き。読んでいる間ずっと腹筋が痛かったです。
 と、ここまでギャグのこと中心に書いてきましたが、この作品、実はエモ要素もあったり、主人公の覚醒があったり、どんでん返しがあったりするので、全く退屈しません。酔ってるとしか思えないギャグを書きながら物語として成立させてるのホント何なんだ。磨き上げたセンスの賜物だと思います。面白かったです。

 はい。
 それでは最後に、大賞作品を発表したいと思います。
 各自ドラムロールをお願いします。

 ご参加いただいた9作品の中で、(かぎろの評価では)頂点に立った、第一回ドゥッダンツカドゥッドゥン大賞受賞作は…………

 古川 奏さんの文学作品!

 『パールスケールの水槽』です!

 素晴らしい作品をありがとうございます!


 ★第一回ドゥッダンツカドゥッドゥン大賞★

 古川 奏さん『パールスケールの水槽』
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894392855

 かつて小説を書いていた美波さんが、凛ちゃんという物語大好きな女の子を家に預かることになる、しっとりとしたハートウォーミングストーリー。
 文章も、少女のキャラクター性も、すごく高いレベルにまとまった作品です。
 読んでいると言葉のひとつひとつが沁み込みます。文章が巧い。わかりやすい上に、読んだ後には心に残るので、最後まで読み終わる頃になると全身が感情だらけで身動きがとれませんでした。ですので、読了直後しばらくの間は正直、この作品は僕の力ではレビューできないと思ってしまいました。それだけ打ちのめされたというか。
 でもこれだけは言いたいです。子供から大人になって何かを失って、あの頃のことを忘れても、きっかけがあれば、思い出の中から失った何かを見つけられるんです。忘れても、思い出が覚えているから、思いだせばいい。美波さんを諦念の淵から救い上げたのは凛ちゃんだけじゃなく、美波さん自身でもあったんですよね。幸せな話だと思いました。
 美波さんは凛ちゃんに「真っ直ぐなルートであってほしい」と祈ったけど、美波さんだって遠回りながらも見つけられそうだし、ちょっと曲がりくねったっていいんじゃないの、みたいなことを作品が言っているように感じました。少なくとも僕はそう受け取ることにしました。良い話でした。面白かったです。

 以上、大賞と特別賞の選定でした。





 ★おわりに★

 みなさん改めましてご参加ありがとうございました。賞差し上げた作品以外にも好きな作品あったのでもう全部に賞あげればいいのでは? とか思ったけどそれだとなんか……なあ……になったので5作品に絞らせていただきました。でも僕は何の権威もない雑魚なので賞とっても自慢にはならないです。ごめんね。

 またなんか思いついたら第二回をやります。半年くらいの間隔は空けたいかな。あと大賞作品にはお約束通り後日レビュー書きにうかがいます。特別賞作品にも★入れます。

 てか今回お題が難しかったですよね。誰だよあんなお題考えたの。おれも賑やかしに参加したかったけどだめだった……。次は楽勝なお題にします!

 じゃあそんな感じで第一回ドゥッダンツカドゥッドゥン大賞結果発表を終わります。お疲れさまでした!





 ★受賞作品一覧★

【第一回ドゥッダンツカドゥッドゥン大賞】
 古川 奏さん『パールスケールの水槽』
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894392855

【第一回ドゥッダンツカドゥッドゥン大賞・オルタナティブ】
 あすぱらさん『大凶美幸と愉快などうぶつ達 - king of children-』
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894527364

【かぎ新一賞】
 てこ/ひかりさん『デジタリアン』
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894117840

【やるせな賞】
 B-taleさん『The Curious Case』
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894113778

【こころあたたまり賞】
 井守千尋さん『みどりクエスト』
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894384429

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