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姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』

東大のブックトークでは、議論が紛糾したらしい。
読めば、紛糾した理由がわからないではない。

いわゆる「トウダイセイ」が、この作品には登場する。
それはあまりに一方的で、反感を抱くに至る過程が推測できるからだ。
その類型的な人間は、本当にいないのか?
じゃあ、「トウダイセイ」じゃなかったら、この事件は起きなかったのか?

色々なクエスチョンはあるけれども、私はこの小説が必要だと思った。

あらすじを書くわけにはいかないから、すべては説明できない。
けれど、事件が起こってしまった今、例え類型的であるにせよ、「トウダイセイ」を考えてみる必要があると思ったのだ。

それは、東大に在学するだけではない。
すべての、人間関係を上下関係で捉える、どこにでもある価値観、そのすべてが「トウダイセイ」である、と、私は考えている。

姫野カオルコじゃなかったら、この作品は描けなかったと思う。
そして、この作品に対する作者の在り方は、真っ当で正直なものであるとも思う。

とにかくクセが強いから、万人に勧められるものではない。
けれども、今、私がこの小説を必要としていたことを、忘れたくないと思う。

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