僕は自殺を扱った主張や物語が嫌いだった。
自分でもうまく言語化できない、言いようのない不満のようなものが、いつも心に渦巻くからだ。
「これで彼らは救われるのか? …いや、少なくともオレなら救われない」
いつもそう思った。
では何故そう思うのか。
きっとそれは、生者の言葉だからだ。
彼らが届けている感動は、生者に向けたものだからだ。
なら僕は、死者の言葉を届けよう。
死者に寄り添い、死者の言葉を彼らに届けよう。
そしたら、僕のような人間にも届くんじゃないか。
そう思った。
でも、この小説を書くにあたり、何度も何度も考えて、けっきょく最後に出てきたのは、生者の言葉だった。
頭をひねくり回して考えた結果、最後の最後に彼らを救うのは、生者の言葉なのだと結論づけた。
たった一言。
最後に、結衣に死神さんが放ったたった一言。
この一言を伝えるために、約18万文字に渡ってこの小説を書いてきた。
拙い部分も多いだろう。
伝わりきらなかったところもあると思う。
それでも、この小説を読んで、何か少しでも心に響いたものがあるなら、とてもうれしく思う。
この小説を読んでくれた全てのみなさんに、どうか死神さんの言葉が届きますように。