• エッセイ・ノンフィクション
  • SF

『雪の名残は恋模様』を書き終えて。

 あとがき

 やっはろー。みんな、霜月です。

 『雪の名残は恋模様』、ようやく完結させることができました!わ~い!……と、本当だったら手放しで喜びたいところですが、今回この小説を書くにあたって様々な課題が見えたので、浮かれるのはまだまだ先のようです。

 さて。ボロは着てても心は錦…ではないですが、プロ作家を目指している身として、将来を見据えてしっかりあとがきを書く練習もしておこう!という心持ちで現在この文章を綴っています。とはいえページ数に限りがあるわけでもないので、あとがきという名の一人反省会を行っていきたいと思います。駄文で申し訳ないです。『予習より復習が大事』ってフランス語の先生が言ってたもんで。ゆえに抗議反論不平不満は一切受け付けません。私は。

 ということで、この文章はザックリ三部構成でお届けすることにします。
 ① 霜月の近況(一番どうでもいい)
 ② 作品の振り返り
 ③ 霜月の今後の展望(大注目! これを読まずんば物書きに非ず。)



 はい、まずは①。

 春から勤めていた塾のバイトを辞めてまで、夏休みは実家に引き籠ってPCカタカタ祭りに参加してた限界大学生霜月夜空さんですが、大阪の寮に戻って以来、めちゃくちゃ元気に日々を送れています。大学も前期みたいにサボることなく毎日通えていて、暴飲暴食に走ることなく適度に筋トレや散歩もしつつ、本も読んで小説も書いて…と、結構QOL高めの生活を送ってました!あと最近、悲願の京都旅行にも行けました。もちろん一人で。

 そこそこ満足に日々を過ごせるようになったのは、なんだかんだ、今年の夏を全て捧げて書き上げた小説のおかげだと思ってます。読んでる人には鼻で笑われるかもしれませんが、本当に、これがダメなら死んでもいい、と思えるくらいの覚悟と気合で創り上げた作品でして、血と汗と涙、目には見えない魂―まさに己の全存在を賭けたと言っても過言ではなかったです。そして、ここまで本気で自分と向き合って、納得のいく作品を完成させるという経験は、たとえそれが、ひと夏の短い間のものだったとしても―私を一人の人間として、一回りも二回りも成長させてくれたと実感しています。

 自信がつき、日々の暮らしに余裕を持てるようになりました。当の作品は第19回小学館ライトノベル大賞に応募させて頂き、一次審査の結果が分かるのは今年の12月とまだまだ先ですが、間違いなく、あの物語を描けてよかったです。ありがとう、過去の自分。

 


 ②に移りましょう。今作『雪の名残は恋模様』について。

 最初に、この作品を書くことになったキッカケをお話します。

 私は小説を書くことが大好きで、それを生業とするために、プロの小説家を目指して現在進行形で執筆に明け暮れています。しかし私は、ダラダラと夢を追いかけ続ける時間を、何年も過ごす気は全くありません。最長で二年―それが、許容し得るタイムリミットだと考えています。①でも言及した、今年の夏に書き上げた作品に関して言うと、最初に私がその作品を書こう、と決めた際には、「この小説で何の評価も実績も得られなければ、もう何もかも諦めよう」と決意していました。あれから時間が経った今では、流石にそこまでの極端な思考は薄れましたが、それでも、あと書いて一作か二作か、と思っています。

 …となった時に、「じゃあ次に長編を書くとしたら何を書こう?」となりました。私が出した結論は、「冬を舞台にした現代ファンタジー」でした。しかし、私はこれまで、春か夏の物語しか書いたことがありませんでした。寒い季節を描いた経験が、皆無だったのです。

 そこで私は、公募用の長編を書く前に、その下準備として、冬が舞台の短編を書こう、と思い至りました。これが、『雪の名残は恋模様』を書くことになったキッカケでした。


 ということで、いわば本命の長編小説の練習台として、執筆をスタートした今作ですが、いざ書き出すと、これが難しいのなんの(汗)。

 まず、当初の予定では、3万字完結にするつもりでした。しかし私は今まで、10万字規模の長編しか書いたことがなかったので、短編におけるペース配分が把握できていませんでした。一応、2万字完結の短編ミステリを書いたことがありましたが、ミステリの場合はトリックの仕掛け~種明かしまでの一連の流れをそのまま文章にすればよくて、キャラ立てや心情描写は多少削っても問題ありませんでした。しかし、今作は恋愛小説です。何のSF要素もファンタジー要素も含まれていない、純然たる中学生の恋模様を描いた作品です。普通に考えて、恋のはじまりから終わり、そしてその過程で起こる様々な人間トラブルや登場人物の心情の移り変わりを描くには、どこを削ってどこを残せば、良い感じで3万字以内に収まるかが全くの未知数でした。悩んだ挙句、私はかの有名な「Wの法則」に頼ることにしましたが、まあそのせいで、しっかり5万字完結の中編に変貌を遂げました。わーい。

 尺の問題の他にも、私の“トレンドや時勢に対する感度の低さ”という欠点が浮き彫りになりました。

 今作に関して言うと、正直メチャクチャ自信があります。それは作品単体で見た時のクオリティもそうだし、カクヨムに転がっている他の作品と比較した時の、一つの小説としてのレベルでも。……にも関わらず、このあとがきを書いてる時点での☆の数は、わずか四つです。読んでくれた人数も、いまだ四人(うち三人は途中離脱)。

 う~ん(困)と首を捻りたいところですが、まあ、そうでしょう。タイトルもガチガチの一般文芸寄りですし、物語の内容も、流行りの要素はゼロです。「面白い作品=多くの人に読まれる」が成立しないように、私は今作を、「沢山の人に読まれてほしい!」と思って書いていないのです。いや、思ってはいるのですが、人目に触れることが最優先事項ではないのです。「文学的にレベルの高い作品を創り上げる」が第一義目標だったのです。端的に言ってしまえば、「Webでウケる気ゼロ!(満面の笑み)」というワケなのです。


 しかし、将来プロ作家として活躍することを目指している以上、やっぱり、どう大衆に迎合するかは、切っても切れない問題です。特に、ラノベ界隈はそうでしょう。

 改めてトレンドの重要性を知りました。プロアマ関係なく、この世界で生き残るために、これからは流行の分析を怠らないよう心掛けます。



 私の未熟さゆえ、技術的な問題点を挙げ出すとキリがないので、ここらで内容の話に移行します。今作は高校受験を控えた中学三年生の、ひと冬の恋愛モノでした。そこで今回、特に意識して描いたのが「思春期特有の不安定な情緒」でした。振り返ってみれば、中学時代の私は、とても浅はかで短絡的で、持って生まれた感性だけで生きてました。理性的に物事を考えていた記憶が全くありません(笑)。高校三年間を経て、大学生になり、あと少しで成人しようという歳になってようやく、「あの頃の自分って、どうしてああだったんだろう」と歯がゆい思いに駆られました。けれども、それは同時に、幼かった自分を、懐かしく、どこか愛おしくすら思う、甘いセンチメンタリズムでもあるのです。世界は不条理で満ちています。現実は残酷です。大人になればなるほど、人は汚れ、捻くれ、輝きを失っていきます。だからこそ、無限に広がる空に向かって、無邪気に手を伸ばしていた、あの頃の自分は、何よりも美しかったと、胸を張って言えます。

 今作の主人公、結城秋久には、そんな、無知ゆえの尊さを背負ってもらいました。ヒロインの宮村雪乃が、かなり扱いに困る性格だったこともありますが、秋久は作中で、雪乃を振り回し、時には傷つけました。これを読んだ誰かは、「なんて傲慢なんだ」と思うかもしれません。確かに傲慢です。しかし秋久は、少しずつ少しずつ―それは、触れては溶ける粉雪のように、一歩進んで二歩下がる、努力と呼ぶにはあまりにささやかなものだったかもしれません。ですが彼は、15歳なりに頭を振り絞って、想像力を働かせて、拙いながらに、雪乃に想いを伝えました。天文学的なミクロな数値だろうと、人は変われるのです。

 雪乃も同様でした。お世辞にも恵まれているとは言えない家庭環境で、過去にはそれが原因となったイジメにも遭い、生来の心を閉ざしがちな気性も相まって、ますます孤立に追い込まれました。このまま鬱屈とした中学時代を終え、現状からの逃避という形で東京に引っ越す。そんな未来しかないと思っていた彼女の前に現れたのが、かつての隣人、秋久でした。彼が雪乃に近づくのに、明確な理由はありません。強いて言うなら、ほのかな恋心と、過去の罪滅ぼし。どちらも彼のエゴです。それでも、彼が雪乃に見せた優しさは本物でした。並んで歩いた通学路。温かいシチュー。異性と過ごすクリスマス。それらはすべて、これまでの雪乃の人生にないものでした。運命は残酷にも、二人を切り裂いてしまいますが、秋久のおかげで、雪乃は、自らの感情に素直になることが出来るようになった。少なくとも私は、そう思っています。

 私は今作を、ぜひ、パズルのように読み進めてほしいです。パズルというと、単純化されたロジックのように聞こえますね。では、平面的なジグソーパズルではなく、立体的な知恵の輪を考えて下さい。物語の中で、キャラたちが「あいつはこう思っているんじゃないか」「いや、やっぱりこうじゃないか」と、互いの心情を推し量り、様々な可能性を繋げて伸ばして引き離して―その過程を、ぜひ楽しんで頂きたいのです。分かりやすく言えば、恋の駆け引き。けれど、秋久や雪乃の葛藤を、単に“恋”と括るのは、あまりに浅はかな気がしてなりません。この思いを、読んでくれた人と共有できたなら、作者にとって至上の喜びです。




さあ!いよいよ③、今後の展望について語っていきます!いや、ここらで打ち止めにしとかないと、本文よりあとがきの方が多いという、前代未聞の小説が出来上がっちゃいそうで。

 まず今作に関しては、カクヨム公式自主企画「U-24杯」に応募させていただきます!本コンテスト、応募用件が「現代を舞台にしたエンタメ小説」となっていますので、憎き異世界転生野郎どもを排除できるので最高です!絶対に大賞獲ってみせます!

 12月には小学館ライトノベル大賞の一次審査結果発表も控えてます。どきどき。

 とはいえ、これらは既に終わった話ですので、結果がどうあろうと、あともう二作、魂を賭けた長編小説を書くつもりです。今作のおかげで、冬を描く経験が積めました。トレンドの重要性も痛感しました。また、この頃、自分にはまだまだインプットが足りないな、と思うようになりました。語彙、知識、表現技法、展開の引き出し。まだまだ足りません。ダニンクルーガー効果で言うところの、絶望の谷に突き落とされて、ようやく這い上がり出した段階ですかね。若さに任せてガンガン色々なことを見聞きして、感じて、考えて、余すことなく自分の血肉に変えていきます。


 新作のアイディアは少しずつ集めていきます。創作をはじめて9ヶ月。そろそろ結果が欲しいところですが、焦らず、じっくり、だけど決して止まることなく、日々を過ごしていきます。


 最後に。『雪の名残は恋模様』を描けて、本当に良かったです。また、宝物が一つ、増えました。ありがとうキャラクターたち。そして、苦労しながら書いた自分。


 2024.10/27  霜月夜空

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する