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夜明けを待つ日があってもいい

日付が変わった日に目が覚めた。
寝る前から不眠の気配はしていたのだけど、そのまま眠ることにした。寝ている筈なのに半ば、起きている感覚がある。
悪夢に近いような夢を見て起きた時、ああ、駄目だ、と覚醒してしまった。

あれは誰の背中だったのだろう。
よく分からない悪夢の名残を払いながら、目を閉じる。眠気は訪れることなく、頭がさえる。こうなったら眠れないことを、私がよく知っている。

たまにこうして起きる日がある。
こういう時は大人しく起きて、眠気に誘われる時を待っている。
それなのに、待てど暮らせど眠気が訪うことはない。
目はさえて頭もはっきりとしている。

夜のSNSは静けさに満ちている。真夜中の住宅地に続く道の静けさだ。人の気配がわずかにあって、闇に紛れた猫がこちらを見ているような、そんな静けさに満ちている。

たまに呟く人々の言葉を眺めながら、ああ、この瞬間に起きている人がいる、と安堵する。
流れる言葉は淡く、優しい。
ただ、眠れないと呟く言葉も、紡ぐ物語も、淡く優しい音になる。

空が、少しずつ明るくなっている。
夜がゆっくりと明けていく。
この時期は夜が早く明ける。
私は早い夜明けが好きなので、この時期がずっと続くといい、なんて思っている。
でも遅い夜明けを待ちわびる人もいる。
だから、夜明けの時間が様々にあるのはいいことなのだろうと思う。
この時期だけの早い夜明けを待つ日があってもいい。
その代わり、今日は起きているのがきついかもしれないけど、そんな日があってもいい。
濃紺の空が仄淡くなる。
ゆっくりと夜明けを告げる空に、朝の訪れに安堵する。
大丈夫だと、空は朝の訪いを柔く優しく告げるのだ。

読み終えた本を再び手に取って、言葉を堪能する。
『別れを告げない』
降りしきる雪の印象的な物語を前にして、そうっと目を閉じる。
朝の訪いに安堵した体の力がゆっくりと抜けていくような心地がする。
過去は今に繋がり、終わらないことを静かに告げる。『別れを告げない』題名の意味を考えながら、私は目を開けて、本を置き、外を見た。
朝がゆっくりと歩いている。
じわじわと光が満ちていく。

こんな日があってもいい、と何度も書く。
朝の訪いはいつも、柔く優しい。この瞬間にも光が少しずつ満ちていく。
敢えて電気を消して、カーテンの隙間から漏れる光を見る。

明るい夜だ、とキーボードを叩く。
出来る限り音を立てぬように優しく叩きながら、夜明けを待つ。

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