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箱庭サイキッカーズ3章解説

どうも。明日葉です。
かねてより宣言していた箱庭サイキッカーズ3章の精神世界の解説をしていきます。
読まなくても大丈夫なように執筆しましたが、これを読んでいただければより楽しんでいただけるというようなものを目指しています。
3章のネタバレ注意です。

3章では美里さんが知美さんの精神世界に潜り込みます。世界のテーマは、3章のタイトルの通り「ひとりぼっちの世界」です。
かつて知美さんは最愛の妹であるアケミをなくしました。同時に視力も失ってしまいます。大事なものをなくすという衝撃に対して知美さんが取った自衛策は、アケミのことを記憶の底にしまい込み、周りを遠ざけるということです。この対応のために、彼女の精神世界は真っ暗になってしまいました。さらに、その世界の知美さんに近寄ると笑いがこみ上げてきて、それに逆上した知美さんが吹き飛ばすという理不尽となって現れました。しかし、この吹き飛ばすという行為は他の人を守ろうとするものでもありました。知美さんはアケミさんのことを忘れています。しかし、無意識のうちに自分に近寄るとその人が不幸になってしまうという刷り込みがされています。アケミを守れなかったという後悔もなんとなく存在しているため、大事なものを守りたいと強く思っていますが、自分にはどうにもできないという無力感も同時に持っています。だから自分に近づかないことがその人のためだということですね。
知美さんは必死に周りを遠ざけようとしていますが、それでも近寄ってくる人はいます。隊員がその筆頭です。知美さんは彼女たちと距離を取ろうとしますが、それでも切り捨てることはできなくて、少しずつ大事な存在になっていきます。そんな存在の居場所が精神世界に存在する緑にあふれた場所です。知美さんから離れた場所、つまりは安全地帯に位置するたまり場です。しかし、時が経つにつれて知美さんの無力感がどんどん強くなっていきます。その影響で安全地帯も段々と狭くなっていきます。
また、安全地帯ではない場所にいる人が二人いました。隊長と紗枝です。紗枝はただどん臭かっただけですが、隊長は明確な理由をもって真っ暗な世界で生活しています。これは知美さんが隊長に対して絶大な信頼を寄せているためです。隊長ならば自分が守らなくても大丈夫だと思っているため、彼女が生活する教会は真っ暗な世界に存在しています。しかし、知美さんは自分から能動的に頼ろうとはしません。隊長は隊長で遠慮して知美さんに踏み込むのを躊躇っています。ある種の事故で美里さんの能力が発動せず、隊長が知美さんにぐいぐいと行っていれば、知美さんの世界の中心になるのは隊長だったかもしれません。
そんな停滞して黒に吞み込まれつつある世界でしたが、大きな変化が起こります。美里さんの能力の発動です。知美さんの本質は依存。依存していたアケミが居なくなってしまったショックのために大事な存在は作るまいとしていた知美さんでしたが、その壁を美里さんが易々と超えてきました。知美さんはこれ幸いと美里さんに寄りかかります。その結果できたのが美里様の像です。
知美さんの精神世界で美里さんは他の人々から嫌われていました。これは、知美さんが美里さんを独占したいという気持ちの表れです。そして、美里さんが他の人に恐れられるほど美里様像は大きくなっていきます。これは知美さんの中で美里さん以外の存在が取るに足らないものになっていき、美里さんの存在が心の中に大きく占めるようになっていくということを示しています。一方で、どんな形であれ精神世界の住民と美里さんの距離が縮まると像は小さくなります。
美里さんの存在が大きくなることを快く思わなかったのがアケミです。美里様像はアケミの閉じこもった場所のすぐ上に位置していました。像が大きくなるということはアケミが生き埋めになるということを意味します。更に美里さんの存在が大きくなれば、アケミさんの存在が知美さんにとって大事ではなくなり、精神世界から消えてしまうという事態も起こりかねませんでした。それを防ぐために、首だけになった美里さんに像の体を与えたという形です。
ちなみに、隊長が美里さんを首だけにしたのは、美里さんが他の住民のことを恨むように仕向けるためでした。美里さんのことを理解してあげられるのは知美さんだけ。そんな刷り込みを植え付けようとしたわけです。
しかし、アケミの思惑により刷り込み作戦は阻止されてしまいます。そして知美さんの目を他の人に向けようとして生まれたのが美里さんの顔をした太陽です。
この太陽は知美さんの外界との窓口や価値の基準が美里さん中心になってしまったということを象徴しています。
自分が太陽に仕立てあげられたことに恐怖を覚えて美里さんは世界からの脱出を図りますが、シロとアケミの策略により子供を押し付けられてしまいます。
シロとしては自分の補佐が欲しくて、アケミとしては美里さんに逃げられては困るから楔を植え付けたかったというところですね。アケミは渋々でしたが。
その結果生まれた千恵は知美さんの性質を強く持っていますが、美里さんの性質もまた持ち合わせています。なんだかんだ言って、美里さんも自分自身を否定しきることはできず、知美さんの一部分でもある千恵を受け入れざるを得なかったというところです。

美里さんの世界の説明をするつもりでしたが、気付けば物語の解説になっていました。需要あります? これ。
まあ、せっかく書いたので公開しときます。もっと知りたいということがありましたら、コメントいただけますと幸いです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。

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