📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」(異世界ファンタジー)
(「第4回一二三書房WEB小説大賞/コミカライズ賞(コミックポルカ)」受賞)
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📖「第664話 わたし自分の記憶が怖い。」
📄「何度も使いたててすまぬな、ステファノ」
「いいえ。必要なことと分かっていますから」
「そうか。無理はするなよ? どこかつらい時はためらわず言ってくれ」
遠話での連絡を受けてステファノはすぐに|呪《まじ》タウンへと飛んできた。連日の飛行で疲れがないとは言えないが、飯屋の下働きに比べれば何でもない。
ステファノとしてはそれが正直な心持だった。
家族の死という痛手は今も心を押さえつけている。ふとした瞬間に鋭い痛みとなってみぞおちを襲うのだった。
それはどうしようもない。むしろやるべきことがある方が気が紛れてよいとも思えた。
「大丈夫です。働けます」
「当たり前だ!」とバンスなら吠えるだろう。「怪我でも病気でもあるめぇし、休む口実を探すんじゃねえ!」と、どやしつける声が聞こえる気がして、ステファノは唇の端をほんの少し持ち上げた。
ステファノが到着するまでの間に、ネルソンたちは王立騎士団に連絡して訪問する許しを得ておいた。相手はシュルツの副官だったが、何やら上の空だったのは気のせいか。
訪問理由である抗菌剤の定期納入体制構築に奔走しているのかもしれないと、ネルソンは推量した。
「あるいはシュルツ団長の身に何か異変が起きたか?」
それ以上はシュルツに会ってみないとわからない。ネルソンはそれまでは余計な予断を持たぬよう、考えに蓋をした。
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お楽しみください。