📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」
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📖「第613話 誰かに踊らされているのかも……。」(予告)
📄「王立アカデミーとウニベルシタスの違いは、入学の間口を開いているかどうかだ」
「それ以外にも授業内容が違うと思うが」
「それは些細なことさ。授業内容なんて社会の需要次第で変わっていくものだからね。それよりも、入学資格に貴族家からの推薦2件を必要とするアカデミーが、圧倒的に閉鎖的だということ」
ウニベルシタスでは初年度こそ貴族家からの|紹《・》|介《・》を受け入れたが、それは入学志望者を募るためだった。運営が順調に立ち上がった現在、推薦は必要条件ではない。
入学可否は試験成績によって判断していた。
「ウニベルシタス単体では受け入れられる学生の量は限られているからね。『教育の自由』を語るのは時期尚早かもしれないが――」
大事なのは教育の機会が「外に開かれている」かどうかだと、ドイルは強調した。
王立アカデミーの校風がどれ程闊達なものであっても、アカデミーは貴族と富豪が囲い込んだ箱庭に過ぎない。
「アカデミーは既存の社会システムを前提とし、それを維持する。精々、貴族階級と富裕層の勢力バランスが小競り合いを起こす可能性しかないだろう」
富豪たちも貴族階級がなくなっては困るのだ。彼らこそが最大にして、最良の顧客なのだから。
「既存の秩序からはみ出す者は排斥されるようにできている。僕やネルソンのようにね」
それは「法」でも「校則」でもない、暗黙のルールだ。秩序の内部にいる限り、そんなルールが存在することにさえ気づかない。
「どうやら騎士団の中に、『教育の自由』を快く思わない勢力があるらしい」
それが問題の本質だとドイルは主張した。魔法への反発は表面的な現象に過ぎない、と。
「それがお前の見立てですか? 貴族たちが反発するというのはわかりますが、騎士階級に疎まれる理由がよくわかりませんね」
「そこは僕も不思議に思っている。騎士の大半は爵位を持たぬ平民だ。階級秩序の恩恵を受けているわけではないんだが……」
「誰かに踊らされているのかも……」
マルチェルとドイルのやり取りを聞いて、ドリーがふと考えを漏らした。
「なるほど。頭が弱い騎士たちを裏からそそのかす奴がいるということか」
「ほう。それならありそうな話ですね」
ドリーの思いつきに、残りの2人も同調した。……
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