📕「🍚🥢飯屋のせがれ、🧙♂️魔術師になる。――知力ひとつで成り上がってやる。」
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📖第468話 酒は要らん。もう一生分飲んじまったよ。
サポリの街を着の身着のまま、無一文で離れ、マランツは街道を進んだ。
峠を越える時分には足取りもしっかりと定まった。
隣町では一軒の飯屋に立ち寄り、掃除洗濯の下働きをして一宿一飯の恵みを乞うた。
頭を下げることに恥などない。呪タウンにたどりつかねばならないという目的があった。
やせこけたマランツの体を見て、飯屋の主人は手伝いの仕事を与えてくれた。
マランツが魔術を操れると知ると、掃除洗濯は良いから火の番、水の番をしてくれと主人に言われた。
マランツにとっては容易いことであった。
錆びついていた魔力が、滑らかに動く。マランツは忘れていた感覚を取り戻していた。
飯を食えば細胞が燃える。体が再生を果たそうとしていることが、ほてりとして伝わって来た。
いくら水を飲んでも追いつかぬほどだった。
夜になり、店の灯を落とすと、主人はマランツに寝床をあてがってくれた。納戸のような部屋に毛布を持ちこんだだけであったが、構わない。今のマランツなら、どこでも眠れる。
「今日はよく働いてくれた。酒でも飲むかい、爺さん?」
「酒は要らん。もう一生分飲んじまったよ」