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第11話 池袋攻略作戦③ 後 ver3.0



 月とケルトの三女神たちは、それぞれ生命力の共有により、ギリギリでアムリタが間に合う形で生存。
 マイラはとっさにピュートーン形態となり、巨神化スキルで生命力を水増しし、生存。
 他のメンバーも当たり所が良かったかギリギリでロストを免れたが、アケーディアは元々の位置が悪くまともに喰らってしまいロストしてしまった。比較的後方にいたカルキノスたちも、戦闘力の低さからか即死だ。
 疑似カード故か、俺の手の中で、ボロボロと崩れ去っていくカルキノスたちのカード。
 だが、今はそんなことはどうでもいい。アケーディアを……ッ! いや、待て!
 すぐさまアケーディアを蘇生用アイテムで回復させようとして、寸でのところで思いとどまる。
 ここで使っても戦場では復活しない。俺の傍で再召喚が可能になるだけだ。
 ならば、ここはあえて回復は後回しにする……!

『四発目は!?』

 警戒する俺たちの前で、グガランナが背を向けて距離を取り始める。
 その行動は、あの突進が三連発までで、クールタイムがあることを意味していた。

『追え! このクールタイムの間に絶対に始末しろ!』

 俺の指示に、カードたちが憤怒の形相でグガランナを追う。
 グガランナはその巨体も相まって、相当なスピードではあったが、全員が高等忍術を共有し縮地を持つウチのカードたちほどではない。
 一瞬でその距離を詰めたカードたちは、各自掛けられるバフ・デバフを掛けられるだけ掛けた上で苛烈な攻撃を叩き込み始める。
 それはまるで、アケーディアの仇を討つかのように……。
 一撃ごとに悲鳴を上げ、悶えるグガランナ。
 瞬く間にグガランナの生命力が削られていくのがわかる。
 やがて、四肢を半ばまで切断され、グガランナが重たい音を立てて倒れ伏す。
 手古摺らせてくれたが、これで終わりだ……と俺が勝利を確信しかけたその時。

『なっ!?』

 その身体から、パチリと赤黒い雷が立ち上がり始めた。

『馬鹿な! まだ一分くらいしか経っていないぞ……!』

 クソッ! クールタイム一分で連発して良い技じゃねぇだろ!
 疑似安————は間に合わん! ならば!

『イライザ!』

 これだけ追い詰めたならば、技を出す前に!
 イライザだけを瞬間移動で突っ込ませ、他のメンバーは縮地で可能な限り距離を取らせる。
 グガランナの頭の上に瞬間移動したイライザが、大鎌をグガランナの脳天へと振り下ろす。
 ビクンッ! とグガランナが身体を大きく痙攣させ、赤黒い雷が消える。
 そこへ、ダメ押しのもう押し。脳天へと突き刺したままの大鎌から、直接マグマを流し込む。
 さすがに脳を焼かれてはグガランナも持たなかったのか、その姿が消え――――同時に、イライザとユウキ、メアが消えた。
 リンクでもその存在を感じ取れなくなる。

「……………………は?」

 ポカンと呆気に取られる。
 なんだ? 何が起こった? カードたちも混乱し、消えた三名を探し、周囲を見渡している。
 ハッ! と彼女たちのカードを取り出す。
 そこには、灰色のソウルカードとなった彼女たちのカードがあった。

「ば、馬鹿な……」

 一体何が……絶対攻撃を阻止できなかったのか? いや、確かに間に合ったはず。ならば、なぜ……あんな道連れみたいに――――道連れ?
 そこで、ハッと思い至る。
 グガランナは、『殺した者は死をもって償わなければならない』という逸話を持った聖獣でもある。
 これを俺は『死なば諸共』系のスキルと考え、全員への『生還の心得』習得をもって対策としたが、そのまま『トドメを指した相手を強制ロストする』スキルだったとすれば……?
 本来はイライザだけ道ずれにされるはずが、三相女神の効果によって、ユウキとメアも一緒にロストした?

「強制ロスト……そんなデタラメな……」

 マジか……。Aランクからはそんなスキルも使ってくるのか……。

「せ、先輩……一体なにが……?」「カードキーデュラハンが……」

 ウチのカードたちに装備化したデュラハンを通じて戦況を見ていたアンナたちが、戸惑いがちに声を掛けてきた。
 見れば、その手には光となって消え去るデュラハンたちのカードキーがあった。
 デュラハンのカードキーは、特に重要かつロストに恐れが低い蓮華とイライザたち月の三女神に集中させていた。
 それが、イライザたちのロストにより、纏めて道ずれになったか……。

『……ショック受けてるところ悪いが、ほんの少しだけ良いニュースと、めちゃくちゃ悪いニュースがある』

 そこへ蓮華の声が届く。

『……なんだ? 良いからさっさと言え』
『良いニュースは、確かにグガランナは倒した。それは間違いない。悪いニュースは……確かにグガランナは倒したはずなのに、グガランナの魔石とドロップが無い』
「……は?」

 魔石とドロップが無い? それは、それは、つまり……。

『あのグガランナは、眷属だったってことだ』
『そんな馬鹿な!』

 今回の戦いでは、使えるバフ・デバフは全部使った。
 その中には、万が一グガランナが眷属召喚スキルを持っている可能性も考え、『凍てつく月の世界』もあった。
 グガランナが眷属だったのなら、その時点で消滅しているはず!
 ……………………いや。

『オセと同じケースか……』
『多分な』

 あの時も、眷属封印で消えない眷属が出てきた。
 真眷属召喚のように対眷属スキルでも消せない眷属は確かに実在するのだ。
 しかし、あのグガランナが眷属だったとは……。
 グガランナを呼び出せる者など、限られている。
 すなわち、グガランナが夫という記述もあるエレシュキガルと、グガランナを遣わした張本人であるイシュタル。そしてグガランナを造りイシュタルへと与えた主神アヌ。
 そのどれかであった……。

 ――――ブブブブブブブ!

 そこで、カードギアが振動した。
 見れば、それはユージンさんからの着信だった。
 メッセージではなく、通話での連絡は、緊急事態の合図。
 俺はハッと息を吞むと、すぐさま応答した。

「はい――――」
『北川か!? すまん! 今すぐにでも島に来てくれないか!?』

 開口一番、切羽詰まった声でそう告げるユージンさん。
 何事かとアンナと織部がこちらを凝視してくる中、彼はこう言った。

『なんか帝国とか名乗る奴らがいきなり攻め込んで来やがった……! 奴ら俺らを奴隷にするとか言ってやがる……!』

 ――――それは、とうとう人間同士の戦いが始まったことを告げていた。

11件のコメント

  • このver3.0は全体公開になってますが意図通りですか?

    コミカライズ4巻書いました。
    このあたり読むとメアと蓮華の友情連携もっと見たくなりますね。
  • ほうづきさん
    すでに一般公開している分なので、全体公開にしてます。
    友情連携、自分も好きなんですが、他t界のレベルが上がってくると、中々うまく書けなくて……。
  • グガランナ戦修正したんだ。
    前のバージョンは敵舐めすぎでつまらなかったし、よかった。

    しかしカードキーか。デュラハンは勿体ない気もするけど、より全力を出してる感がするな。
    でもカードキー使うなら、Cランク組の上書きして真眷属増やさないのかな。
    蘇生用にワンセット確保しておいてもいいだろうし。
  • コメントから今日が3/25なことを思い出し、電子版ですがコミック購入させていただきました。
    エンプーサになったメア、めっちゃ可愛かったので、サキュバスランクアップにも期待!(大分先ですが…)


    > 見れば、その手には光となって消え去るデュラハンたちのカードキーがあった。

    小夜は元々デュラハン持ってたと思いますが、同一種族カードでのマイナーチェンジはしなかったのでしょうか?それとも名付けまでいってなかった?
  • @avalonorderさん
    主人公のデッキでCランク組は、もうマイラとメア、プリマくらいで、どれも霊格再帰持ちなので、上書きでどうなるかわからないというのが一つ。
    同一種族(サキュバス→サキュバス)だと上書き先の後天スキルに現在の後天スキルが上書きされてしまうというのが一つ。
    以上の理由により、Cランク組もカードキーへの上書きは難しい感じですね。

    @teramaruさん
    お買い上げありがとうございます!
    サキュバスメアになるまで続くと良いな~。

    >小夜は元々デュラハン持ってたと思いますが、同一種族カードでのマイナーチェンジはしなかったのでしょうか?それとも名付けまでいってなかった?

    同一種族(デュラハン→カードキーデュラハン)でのマイナーチェンジは後天スキルが上書きされるので、今のデュラハンも結構育成されているので上書きはしませんでした。
    ぶっちゃけ、ダブっても全然良いですしね・・・・(笑)
  • 漫画4巻買いました。メア可愛いっすね
    マンガアプリの広告で今日発売日だって知ってビックリしました。
    微力ながら応援しています。
    一応書籍で買ったんですけど。ピッコマとかで勝った場合作者さんの収入になるのかな?
  • つまり、名無しのカードキーをランクアップさせてBランクにし、C+組のランクアップに使えばオッケーですね。
    マイラはどう考えても再帰消えないし。

    悪魔系のAランクをロスト寸前まで追い込み、カードキーのランクアップ先になれ。そしたらウチのレギュラー陣のランクアップカードに使ってやんよ。だと、一番最初のランクアップ時のカードが元になるとかでカード化するメリットAランクカードには無いのかな。
  • @ASAHIDE5290さん
    お買い上げありがとうございます!
    >一応書籍で買ったんですけど。ピッコマとかで勝った場合作者さんの収入になるのかな?
    その辺のシステム、実はよく把握してないんですよねーお恥ずかしい話。
    読者の皆さんは、好きな形で買っていただければ大丈夫ですよ!

    @TAKASAKI_SAKUYAさん
    >つまり、名無しのカードキーをランクアップさせてBランクにし、C+組のランクアップに使えばオッケーですね。

    その形なら影響ないですね!
    Aランクレベルとなると、基本的に命より誇りを選ぶので、ボコして捕獲は難しいかな~。

    @Nezumi86さん
    ごめんなさい!
    押し間違えてコメント削除してしまいました!(汗)

    >カードキーデュラハン散る。短い登場になったなw
    >グガランナ戦は全体的に、手を尽くした戦いって雰囲気になってて良くなった感じ!

    ありがとうございます!
    カードキーデュラハンは犠牲となってしまいました(笑)
    一応、一枚だけは残ってますが。

  • 今回の修正でグガランナの絶対攻撃が3回連続で使えることになったのでアイギスの盾を装備したアテナの絶対防御2回連続では防げなくなりましたね^^;
    次回からのグガランナ攻略楽しみにしてます!
    まぁカルキノスがいるので
    初回のグガランナの絶対攻撃のうち終わりにイライザの瞬間移動→絶対攻撃→カルキノスでイライザロスト回避
    くらいで選択肢がほとんどなさそうですが・・・
    でも真眷属召喚って記憶が残っているから乱用できなそう
  • マスターと別階層に飛ばされると幽霊状態で休眠する設定があったし、適当な迷宮の前を陣取って、戦線復帰が難しい状況でロストするくらいなら逃げ込むって選択肢もあるのかな?
    仕切り直しても、戦力減らしたマスターが危険地帯を通って直接迎えに行かなければならないし、逆に相手に逃げ込まれたら枚数制限ありの状況で討伐しなきゃいけないから、あり得ないのは理解してますけどね。
  • @Kusuriさん
    >今回の修正でグガランナの絶対攻撃が3回連続で使えることになったのでアイギスの盾を装備したアテナの絶対防御2回連続では防げなくなりましたね^^;

    グガランナ再戦にまた頭を悩ませることになりそうです・・・・・w

    @terusanさん
    アンゴルモア中は、迷宮の一階層と最下層は外と繋がっていますが、さすがに別の迷宮の二階層とかに逃げ込むと真眷属とは言えども迷子状態となってしまうので、迷宮に逃げ込むと言う手はアリかもしれませんね。
    逆に、相手に逃げ込まれたら枚数制限ありの状況で討伐しなきゃいけないというのもあり得るので、中々辛そうです。
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