今朝の近況ノート、ただのランキング報告のみになってしまったので。ちょっと凛の学校風景でも書いてみました。
『制服デート』
https://kakuyomu.jp/works/16818093089757579868 【走る、お昼】
「私たち、友だちだよね?」
友だちはにっこり。
「ねぇ、なんで答えてくれないの?」
ギュッと両手を握られる。
「凛、完走しようね!」
「うぅ、っぐ…………は、はい」
寒風吹き荒ぶ中、何故人は走るのか。
「授業だからね。はーい、スタートするよー」
っしゃ!
「凛、凛! 最初から飛ばしちゃダメだって」
そ、そっか。わかってるわかってる。
「おぅ」
「も〜、行くよ〜」
スタート!
友だちは軽快に走り出した。軽快に走ってる。…………私走るの、向いてない。向いてないかもしれなーい。
「待って〜〜」
走るのってさ、力使い過ぎじゃない? もっとさ、こう、HPを小出しにローテンションのまま、持続可能な次世代エネルギー……みたいな走りが、あったりするんじゃないの? ね〜〜
「あ、七沢さん」
「林くん。……いや、『持久走あんま疲れない』林くん」
「なんで脇腹押さえてるの? 痛い?」
「う。こ、これはね、痛くなるなよ? と押さえてるのです」
あはっと林くんが笑った。
「あのね、痛くなったら、痛い側伸ばすといいらしいよ」
「ほんと?」
こうかな? グイーーっと走りながら伸びてみる。
「痛くならないとは別のだけど、あんま疲れない走り方で『ナンバ走り』というのがあって」
林くんよ、何故に走りながら喋れるのじゃ? 凛は、凛は、もうアカン感じなのや……
「江戸時代に飛脚が使用していたと言われている走法で、右手と左足、左手と右足が同時に前後に動くのが特徴で」
体幹の軸がブレずらい走り方なんだって、と。なんで林くんが、持久走あんま疲れないのか、わかった気がするよ。林くん、背中めっちゃ真っ直ぐ、綺麗なんだもん。凛は体幹、ブレブレです。
林くんは、ナンバ走りをして見せてくれた。私は、脇腹が痛くならないよう伸びながら走ってみた。二人して先生に、真面目に走らんかい、言われたよ。
私は、友だちとも林くんとも別れて、独り走っている。
もう、ゴール……してもよくない? まだなの? もう……充分……だよ(泣)。
昼休み。
YouTubeにお弁当ショート動画をあげている友だちが、スマホを構えている。
「凛〜、大丈夫?」
私は持久走で力尽きていた。食べるより、こうして居たい。
「凛が机と同化してるよ〜。ねぇ、代わりにお弁当撮ってもいい?」
「いいよ」
私の頭の上で……林くん? 顔を上げると、友だちが林くんのお弁当を撮っている。私も見たい。林くんのお弁当。
「あ、凛。すごいよ! 林くんもお弁当自分で作ってるんだって」
へぇ〜〜〜〜!
「作るって、バイトで作ったの買っただけだけどね」
バイト……
「林くん、バイトしてるの」
「スーパーの惣菜コーナーだよ」
「これ、林くんが作ったのー?」
友だちがコロッケを食べている。
「雑用から、最近調理手伝いやらせてもらえるようになったんだ。七沢さんも食べる? コロッケ」
「え! いいの?」
「どうぞ」
林くんのお弁当箱からコロッケを一つ、いただく。わー……
「ありがとう。いただきます」
「凛、にっこにこ〜。コロッケ好きなんだ」
「う、うん」
林くんが作ったコロッケ…………冷たいのに、おいしいな。私、揚げ物はやったことないよ。
「揚げ物作れるなんて、すごいねぇ」
「業務用の調理器具が揃ってるから、出来るんだと思う。家の台所では作ったことないよ」
「そういうものなの?」
「そういうものだよ」
私は林くんに、自分のお弁当箱を差し出した。
「タコとカニ。いる?」
コロッケのお礼にタコ・カニウインナー。私のは、切込み入れて焼いただけだけど。
「ありがとう」
なんか……作ったもの食べてくれるのって、いいな……
今度、卵焼きでも作ってみようかな。
【終】
時系列的に、ここから紹介文のSSへ繋がりますね。