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【短編】カラータイル

https://www.gamesaien.com/game/color_tiles/

 スマホ片手にリンク先へ飛んだ。


 カラータイル。


『……ブラウザーゲームか』




 プレイボタンを試しに押していた。ランダムにカラータイルの並んだ画面へ変わる。

『同じ色のタイルを消していくのか……スマホだと、タイル、小さいな』

 子ども向け。パズルゲー。恐ろしくシンプル。キャラクターもストーリーもない。地味なゲームだ。

 拡大して、指先が触れるのにちょうどいいサイズに加減する。同じ色のタイルが交差するブランクスペースに触れて、次々消していく。タイルの消える音が心地良い。キータッチ音とか、そんな感じ。ミスタッチはエラー音が鳴る。エラー音は聞きたくない。タイルをひたすら消していく。

 左上の端っこから始めて、真ん中ら辺まで来た。スマホの縦画面に、カラータイルの左側が拡大されている。左から始めて、少しずつ右側へ移動しながら消していく。要は、タイルを全部消せばいいだけ。それだけのゲーム。

 ほんの少し……マゴマゴしていたら、タイムアウトで終わってしまった。あっけない、おしまいの短い音楽が鳴った。スコアの数字は、半分にも届いていない。
 もう一度プレイボタンを押していた。

 さっきよりは良い感じ。軽快に、リズミカルに、カラフルなタイルは消えていく。

『いいぞ』

 風呂にまだ入っていない。一瞬、現実が過った。目がタイルに釘付けにされていて、直ぐに引き戻される。風呂なんて二十分で済む。窓の外はいつの間にか真っ暗で……でもまだ夕方だ。陽が暮れただけ。

 スコアが百を超えるようになってきた。後少し。そんな、逸る気持ちが、何度ももう一度プレイボタンを押させる。

『これ、フルスコアっていくつだ? 二百? …………二百か』

 左上のタイムバーを見てしまうと焦る。拡大で減り続ける時間が見えないようにしよう。そうしよう。だが、チラリと見えてしまった時間は、十九時半過ぎ。

『え? はぁ? 七時? ……半、過ぎてる』

 ついさっき夕方で……嘘だろ? 焦りで停まった指先はタイルを消せずに、おしまいの音楽が鳴る。追い詰められた気持ちなのに、もう一度プレイボタンを押している。

『後少し。後少しなんだ』

 黙々と、粛々と、取り憑かれたようにタイルを消している。消し続けている。…………トイレに行きたい。風呂へ入ってしまいたい。タイルを消したい。そう、もう少しなんだ。後ちょっと…………




 横になったまま、やっている。同じ姿勢のまま、身体が固まってしまったみたい。目がタイルしか見てない。瞬きも減ったような。左手でスマホをホールドして、動いているのは右手の親指だけ。
 二十一時を過ぎた。百八十とか、百九十、タイルを消せるようになった。何度か終わりら辺で、どのタイルも消せない状況になった。

『スマホの画面で、拡大して、移動しながら消していくのは……無理がある。全体が見通せないから、先が、どんどん運ゲーになっていく』

 風呂に入る時、洗濯機を回してる。夜に洗濯機を回してもいい時間は、間近だ。カラータイルを閉じた。起き上がって、スマホを充電して風呂へ入った。




 光の速さで風呂を済ませたと思う。髪を拭いて、飲みものを用意して、今夜はもう眠るだけ。

『さぁ、始めようか』




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