十二月も中程になって、街の景観もクリスマスツリーが飾られ、天王寺ではクリスマスソングが流れている。
イルミネーションに輝くもみの木のオブジェを見上げながら、エアが笑った。
「ねえねえ、サンタさん来るかな!?」
「なんだ、欲しいものでもあるのか?」
「ううん、本当にいるなら見てみたい」
「ああ、なるほどな……」
異世界で幻想的な存在とも触れているだけに、エアはサンタの実存を微塵も疑っていない。
ならば、わざわざ夢を壊すこともないだろう。
「どうだろうなあ。同じことを考える子どもは多いけど、見つかってないからな」
「そっかぁ。じゃあ気配遮断とか認識阻害の魔法とか使えるのかな」
「いや……それはどうだろう」
真面目に方法を考えるエアに渡は苦笑を漏らしたが、ふと別の可能性にも思い当たった。
サンタが本当にいたとしたら?
魔法使いや陰陽師、霊媒師のように、物語の中だけだと思っていた存在を、渡はすでに現実のものとして見ている。
地球にも龍脈のような存在があった上に、何やら精霊的なものもいるとステラは言っていたのだ。
サンタも本当はいたのかもしれない。
「それはそうと、サンタさんはお利口にしてる子どもの所にプレゼントをしてくれるそうだぞ」
「じゃあアタシには難しいかな。だって、子どもじゃできないこと、毎晩してるもんね❤」
「うっ。そうだな」
エアが渡にだけ見えるように、コートの下に隠れた肢体をちらりと見せびらかせた。
深い谷間のまばゆいばかりの白い肌に目が吸い込まれる。
エアが自分の乳房を持ち上げて、タプタプと揺らした。
エアの顔よりも大きいこの巨乳に何度しごかれ、搾り取られたか。
「クリスマスは本当にサンタさんがくるか、試してみたらどうだ?」
「おおー、それいいねぇ」
「でも夜更かしはするなよ。クリスマスは皆でお酒飲んだり、御馳走するんだから」
「ニシシ。夜もみんなで楽しむんでしょ?」
「まあな」
当日はエアたちがサンタコスをしてくれるという話になっていた。
そのための衣装もすでに購入しているし、準備は万全だ。
彼女たちの過ごす初めてのクリスマスを、渡もエアも楽しみにしていた。
そして、イヴを楽しみ、翌日。
エアが珍しく早起きしていて、渡と早朝に顔を合わせた。
どうやらサンタとプレゼントが気になって、目が覚めたようだ。
「あ、主、サンタさんいた! 本当にいた」
「おお、どうした」
「靴下にプレゼント入ってた! 見て! ほら!」
目をキラキラと輝かせて、エアが大きな靴下を持ち上げた。
中に入っているのは、前から欲しがっていたゲームの高級コントローラーだ。
バレないようにそれとなく質問するのが大変だった。
なんといっても、エアは臭いや心音から感情を読み取れるから、サプライズプレゼントは難易度が高いのだ。
「良かったな。エアがちゃんと真面目に働いてたおかげだ」
「ニシシ……ありがと。でも、アタシが枕元に立たれて気づかないなんて、サンタは不思議だなあ……。もしかしたら精霊とか神霊かもしれないね」
「今は煙突がないから、どうやって入ってるのかも分からないしなあ」
プレゼントはエアの希望を事前に聞いていた渡が用意したものだ。
渡は上手く行ったと喜んだ。
エアは大人の女性だが、純真なところがある。
素直にサンタを信じるエアの気持ちを裏切りたくはなかった。
魔法や錬金術に詳しいステラに協力を仰ぐことで、プレゼントを直接靴下の中に短距離移動させたのだ。
「早速遊んでみて良い!?」
「ああ。もちろんだ」
「やったー! サンタさんありがとう!」
キャホホホーイ、と笑いながら、すぐに包装と箱を破り、ゲーム機に接続する姿を見て、渡の胸に温かなものが湧き上がった。
さて、マリエルやクローシェたちも起きているだろうか。