クリスマスプレゼント+初サポーターのお礼として全体公開します。
今後はこういった本編に絡まない小話をお礼として公開予定です。
それはある日のことだった。
日本での暮らしにも慣れ始めたエアは、高い適応力から、テレビに夢中になっていた。
USB接続とWi-Fiによってネット回線の使えるそのテレビは、ネットブラウザから有料配信まで様々なものを見ることができる。
エアはテレビの前にちょこんと座ると、目を輝かせて画面に見入っていた。
耳がピコピコと動いて、体が時折左右に揺すられる。
夢中になって見ているのが傍目にも分かった。
「おおー、こいつやるなー」
「なんだ、エアは格闘技に興味があるのか?」
「うん! アタシの世界じゃ基本的には武器を使っての戦いばかりだから、参考になる。武器を使わない種族は大熊族とか、元々の膂力が半端ないやつばかりだし」
「それで柔道か。ボクシングとか総合じゃないんだな」
「アタシがやるなら柔道が一番警戒しないといけないと思う」
そう言ったエアの表情はとても真剣だった。
ふわふわと何も考えていない猫のような印象を受ける一方で、いざ戦いのこととなると真剣な顔も持っている。
それがエアという少女の姿だった。
彼女は猫ではなく虎なのだ。
ただし、ネットに慣れたことは予想外の反応も引き起こした。
「ねえ、あるじぃー」
「ど、どうした?」
「アタシこれ買ってほしいんだけど、ダメ?」
「おい、また買い物チャンネルに感化されたのか。この前に買ったばかりだろ」
「ねえー、おねがいー、ほら、主の好きな谷間だぞー」
「そ、そんな誘惑に釣られないぞ……ごくり」
タンクトップの襟首から谷間を見せて、渡の判断を鈍らせようと挑発してくるエアに、渡は毅然とした態度で断れる……はずだ。