冬至祭。
一年で最も長い夜、家族又は友人と少しだけ特別な夕食を摂り、プレゼントを交換する日。
そのような日の前日、軍学校特別クラス内での出来事である。
「ねぇ、知っているかい?冬至祭の前日の夜中に、赤い服を着て白い髭をもっさりはやしたご老人が、空飛ぶソリに乗って子供達にプレゼントを配るらしいよ」
「おい、セレスティーア、セヴェリオ、そこの保護者二人!シルヴィオがまたおかしなことを言いだしたぞ!」
「誰が保護者だ。シルの保護者はセヴェリだけだろ」
「私の言うことよりセレスの言うことをきくので、保護者はセレスです」
「え、どうして私を押し付け合っているのかな?」
「気持ちは分かるが、お前達の管轄だ」
嫌そうな顔をするセレスティーアとセヴェリーノ。瞳をらんらんと輝かせたシルヴィオに張り付かれ災難なビリー。
「何の話をしていたんだっけ……あ、そうそう、それでそのご老人なんだけれど」
「まだ続けるのか!?」
「どこかの国の伝統的な祝祭らしいよ。空飛ぶソリ?はないけれど、冬至祭と似ているよね」
「お前の話のどの辺が似ていたんだ?どこも似ていないだろうが」
「プレゼントとのくだりとか?」
「そこだけだろうが!おい、そこの保護者達!こいつを何とかしろ!」
「だが、シルはビリーに話を聞いてほしいそうだ」
「良かったですね、好かれているということですよ」
「嬉しくも何ともないが!?」
「で、プレゼントを貰うには条件があるらしくて、一年間ずっと良い子でなくてはならないんだ」
「良い子?それは誰が判断するものなんだ?」
「ご老人じゃないかな?」
「……どうやってだ?」
「どうやってだろう?」
セレスティーアとセヴェリーノは、思考の渦へと迷い込んだ二人を放置し、本を読んだり自習をしたりと各々好きなことをしている。
「シルの言っているあれは、本当にある文化らしいですよ」
「聞いたことはある」
「……あるのですか?」
「昔、レナートが同じようなことを話していたからな」
「第二王子殿下が……それなら信憑性がありますね」
「プレゼントも届いたからな」
「……は?」
眉を顰めたセヴェリーノにコクリと頷き本へと顔を戻したセレスティーアは、あのときは大変だった……と溜息を吐いた。