こんばんは、はっとりです。
今回は『天才錬金術師は気ままに旅する~世界最高の元宮廷錬金術師はポーション技術の衰退した未来に目覚め、無自覚に人助けをしていたら、いつの間にか聖女さま扱いされていた件』
以下「聖女」について、所感を書いていきます。
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以下、「聖女」のネタバレを含みます。ご注意ください!
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読んでみると、まさしく一昔前からもてはやされ続けている「主人公最強」系小説。
「魔法科高校」やら「賢者の孫」やらの、「俺またなんかやっちゃいました?」をまっすぐ突き進む、「さすがお兄様」だけをひたすら追求した小説でした。
とにかく、起こる問題全部最強のポーションで解決。
傷の治療・蘇生・欠損部位を生やす・自然汚染や悪天候の解決・魔物退治・廃屋再建・時間操作・能力強化・魔よけ、全部ポーション。
そしてポーション以外の部分でも、錬金術を極めた主人公自身も最強。
最強ロボ作り・魔道具作成・従者の修行・何でもおいしくする調味料まで作る。
金もあっさり錬成する。
当然、無敗で苦戦ゼロ。
(それが当たり前で読んでたからこそ、急に牢屋に入れられたときは思った以上にドキッとしましたけど)
主人公としては旅の途中、目について気になったから助けただけ、解決しただけ。
だからお礼を言われてもあがめられてもむしろ迷惑。
食い下がってでも礼をされようモノならドライに突き放して旅を再開、買った奴隷の亜人少女達と仲良くモフモフ気ままなライフ。
正直、私は読んでて変な気持ちでした。
「ああ、これがウケて、ランキング上位で、書籍化してるんだ」と、ちょっとヘコむまでありました。
でも、まぎれもない現実なんですよねー。少なくともネット小説では。
その読者層の中では。
私のような価値観が異端で少数派なのです。
「毒無効」と同じく、10万字付近まで読んでも特に激しく感情を揺さぶられる描写はありません。
耳を斬られ目を潰され父を殺され、母と共に売り飛ばされたエルフの王女なんてのも買った奴隷の中に存在するのですが、そこも特に深堀りされず。
ポーション飲んで耳も目も復活、主人公に可愛がられながら、特に見せ場もないまま国は主人公ひとりの働きによって救われる。
そして主人公たちの容姿もほとんど情報がありません。
種族的な特徴だけ。
あとはセリフが特徴的なくらい。
それでも「可愛すぎるヒロイン達(大意)」という感想がついている。
「面白い」ってなんだろう、と考えてしまいました。
しかし、同時に脱帽・尊敬しました。
「毒無効」と同じく、約10万字を2時間くらいで呼んでしまえる。
その間、読みにくさやひっかかりを感じたことは一切なく、セリフも、いま誰がしゃべってるのかすぐわかる。
そして作者、茨木野先生は他にも複数の「なろう系」を書き、書籍化・コミカライズ作品も多数。
しかも更新日を見ると、本日だけでも2,3作品、ここ数日では4,5作品を同時並行で2000~3000字を更新されていました。
「徹底」とはこういうことを言うんだ、と思います。
わかりやすさとよみやすさに徹底的に取り組みつつ、読者が読みたいものもしっかり提供できている。
これをプロと言わずなんと言いましょうか。
そして「ランキングを昇る」ことを目標にするならば……私もそれを目指さないといけない。
ネット小説サイトでランキング争いをする小説・その小説家は、新人賞に応募する小説・その小説家とは作り方・考え方が全く違うんじゃないか……と認識するに至りました。
どちらもできていない私は、「どっちか」を選択した方がいい……んでしょうか。もしかして。