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聖女様~没供養

なんてことないシーンにとんでもなく苦戦したので供養……。

5章(前)13話(没)
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 翌朝の私は呆けていた。

「――ノア。エレノア」

 なにをするにも上の空で、考えるのはずっと昨日のことばかりだ。
 昨日の――あの『おまじない』のときに神様が言った言葉が、頭から離れない。

 ――特別。

「エレノア、聞いてるの?」

 私が特別。神様にとっての特別――って。

 ――どういう意味……? い、いえ、普通ならどうもこうもないのだけど!

 仮にも私は若い娘で、神様は――年齢はさておき、見た目は若い青年なのだ。
 そんな二人が手を取り合い、『特別』なんて言ったなら、それはもちろんそういう意味に決まっている。
 というかこれでなんでもなかったら、そっち方が詐欺である。
 相手に末代まで祟られたって文句は言えない。

 ――でも、普通なら、よ。

「エレノア?」

 周囲の声も耳に入らず、私は緩みそうな顔にぎゅっと力を込める。
 頭に浮かぶのは、普通ならざる神様の姿だ。

 ――神様は普通の人間じゃないわ。しかもぽやっぽやで、天然が服を着て歩いているようなものなのよ!

 それどころか、最初は服すらも着ていなかった。
 混じりっ気のないド天然である。

 ――神様なら、深い意味もなく言いかねないわ! 親愛の念とか、代理の聖女だから感謝しているとか、そういう意味で『特別』って言いそうじゃない!?

 事実、昨日の『おまじない』のあとの神様は、腹が立つくらいに落ち着いていた。
 こっちの動揺をよそにあっさりと手を離すと、あとはいつも通り。紅茶を淹れて、他愛無い話をして、それだけだ。
 あまりにも何事もない様子に、まるで私が幻聴でも聞いたのかとさえ思えてくる。

 ――まさか、本当に幻聴だった……!? 夢でも見ていたの!?

「あ、あり得るわ……! 最近いろいろあったから、疲れて夢を――って、痛っ!?」
「エレノア! あんたさっきから、なにをぼーっとしてるのよ!」

 腕を引っ張られると同時に、耳元で聞こえた怒りの声に、私はぎょっと顔を上げる。
 声の主は、ただでさえきつめの顔をさらにきつくしかめたマリだった。
 すぐ隣にはソフィもいて、こちらは呆れた顔を向けている。

「食堂の列が詰まっているわよ。早く進まないと迷惑だわ」

 二人の言葉に、私はようやく、自分が今どこでなにをしているかを思い出す。
 現在、私は朝食を配る食堂の列の半ばに、マリたちと並んでいるところだ。
 列は、ちょうど少し進んだところ。いつまでも動かない私を見かねて、マリが腕を引っ張ってくれたらしい。
 後ろを見れば、迷惑そうにこちらを見る他の聖女の姿がある。

「ご、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていて」

 私は慌てて後ろの聖女に頭を下げると、早足に列を詰めた。
 それから胸に手を当てて、どうにか落ち着こうと息を吐く。

 ――い、いつまでも気にしていられないわ。これから神様に会いに行くのに!

 冷静に、冷静に。
 そう思って息を吸い――吐き出す寸前で、思い出さなくても良いことを思い出す。

 ――そういえば昨日、『穢れは明日で』って話をしなかった!? 神様に触るの!? どこを!!??

 ぶはっ! と口から出るのは、どう考えても冷静ではない呼吸だ。
 思わずむせる私を見て、マリがますます渋い顔をする。

「あんた、なに浮かれてるのよ。……まあ、どうせ神様のことでしょうけど」
「う、浮かれてないわ!」

 という私の言葉を無視して、マリはその渋い顔のまま目を逸らした。
 代わりに見やるのは、私たちが並ぶ列の外。食堂全体をぐるりと見回し、彼女は息を吐く。

「よく浮かれていられるわよね、この状況で」

 マリの視線を追い、私も周囲を見回す。
 目に映るのは、いつもの食堂の、食事を求める聖女たち――だけではない。
 食堂の入り口に立つのは、物々しい神殿兵。
 神官たちは慌ただしく食堂を出入りし、聖女を捕まえて聞き込みをしたり、おかしな様子はないかと神殿兵に話を聞いたりしている。
 聖女たちはどこか怯えた様子で、小声で話し合うのはひそひそとした噂話だ。

 話の内容は、聞かなくても知っている。
 いくら呆けていたとしても、さすがに耳に入ってきていた。

「昨日もまた、穢れが出たっていうのに。のんきでうらやましいわ」

 呆れたマリの言葉に、私は口をつぐむ。
 浮かれている場合ではないのはそのとおり。

 なにせ現在、神殿は二日連続で出現した穢れを警戒し、厳戒態勢が敷かれているのだ。

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供養ここまで。
この三倍くらい没があった。

これは厳戒態勢までは敷かれてないのと、もう少しさっくり進めたかったので没。

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