SFとして面白いが、読んでいて気持ち悪い。
ストーリーのイメージとしてはAIが自我を持って人間と心を通わせる物語が近いかもしれない。
まず、設定なんかから。
近未来のあり得るかもしれない一世界を描いた作品。女性だけの街というテーマでこのような設定は余り見たことがなく新鮮だった。
終盤に真実が明らかになっていく場面は、構成としての見せ方も良く、面白かった。
文章としては詩的な文章が多いように感じた。
第一話が気にならないなら読むのに問題はないが、好みの別れる文章だと思う。個人的には好きでも嫌いでもない。
読みやすさで言えば、日本語的な正しさだったり描写の正確さ、筋道の通り方など引っ掛かることなく読むことができ良かった。
次に読んでいての面白さとか。
この作品では男という性が痛烈に差別されることが多い。
視点は男主人公の一人称で進むので、読んでいて街(マーテル)の在りかたなど、気持ち悪いなと思うことが多かった。
あくまで男目線での感想などで女性から読んだときは分からない。
誰を対象にした面白さを目指しているのかが分からず、娯楽としての面白さは余り感じなかった。
(ここで言う娯楽としての面白さはライトノベルやなろう小説をイメージしてもらえると分かりやすい)
タグに恋愛とあるが、恋愛小説として楽しめるかというと微妙。
以下にあげる理由で、感情移入ができないからだ。主人公が同じ人間とは思えない。
差別やマイノリティを多く取り扱かった作品だが、考えさせられるとはならなかった。
何故なら自己投影するには時代が、文化が、考えが違いすぎるのだ。
よって、今問題となっているマイノリティや差別というものを扱っているにも関わらず、現実の自分達の問題に置き換えることは難しかった。
総評。
SFとしては面白いが、娯楽としては楽しみきれない。
差別やマイノリティの扱いと言い、読者との間ですれ違いを感じる作品だった。
人によって好き嫌いが別れるだろう。
2018.4.23