報告します。
既に崩壊しそうなお母さんの援護。お父さん、こういう時の勘が鈍すぎます。
「そんな疲れてるのかな…?」
「いいえ、多分会いたすぎて見てしまったのよ。」
「でも私も見たけどなー」
「りーちゃんも会いたくて仕方なかったんじゃない?」
「そう言われたらそうなのかなあ…そういやよーちゃん喋ってなかったし。」
え、案外行けるのかコレ…?
「あ、佳乃の靴があるよ。やっぱり帰ってるじゃないか。」
お父さんんん……!
「え、じゃあ嘘?」
「いいえ、そう聞いてるから。嘘のつく子じゃ無いわよ。」
「うーん。よぉちゃんの靴はこれだけじゃないよね?本当にこの靴で仕事に行ったのかな…」
よしよし、なんとか体勢を…
「いいや、佳乃は場面ごとに靴を変えてるよ。これは仕事用。これはお出かけ用。これは正義君と出かける時。こっちは恥ずかしくて履いてないけどいつか正義君に見せたい靴…」
ばか!ばーか!お父さんのばーーか!
鈍いだけじゃなくてボクの恥ずかしい事までばらさなくてもいいじゃんか!何考えてるんだよ…!
「えと…間違えたんじゃないかしら。そんな日も…あるわよ。」
もうしどろもどろのお母さん。まさかお父さんが1番の強敵とは思いません。
「んー…見た感じ靴は揃ってると思うけど…ま、新しい靴も買ってたりするのかな?」
よし、お父さんが懐柔できそう
「嫌ね。佳乃は買う時は絶対に私達に言ってからじゃない。そういう子よ?勝手に買ったり…しな…い事も無いかも。そうね、年頃というか大人だもん。一つや二つぐらい買ってるわよね、ふふふ…」
自分の発言に気付いたのか途中で止まるお母さん。ポーカーフェイスに綻びでも入ってたのでしょう。
「恵理、何か知ってる?」
「…いいえ?さ、早くご飯にしましょう。もうすぐ出来るわ。」
「残業の時は佳乃が帰ってきてから支度を始めるよね?どうして?」
「いや、その…帰ったらすぐ食べられるように…」
「冷めたご飯は出したくないんじゃ無かった?」
「…佳乃はダイエットに励んでるみたいだし、冷えたご飯もうんぬんかんぬん…」
テキトーな事言い始めました。お母さん壊れちゃった。ブツブツと話してますが、きっと焦点が合ってないことでしょう。
「…ふむ。じゃあ家には佳乃、帰ってないんだね?」
「…冷えたご飯は出すべきじゃないと思うわ。何を言ってるのかしら貴方は…」
「それ、君が言い出したんだけど。帰ってないなら佳乃の部屋を調べても問題ないよね?」
「年頃の娘の部屋を開けるなんて駄目よ。正義君とイチャイチャ冷えたご飯を食べてたらどうするの。」
「…そうとう支離滅裂な事言ってるけど理解してる?」
「ええ。冷えたご飯は…」
お母さん、いつも冷静ですが、1度パニックを起こすと大変ポンコツなロボットのようになっちゃうのです。現に今そんな感じ。落ち着いて…
「なら同性で同級生な私なら大丈夫ですね!佳乃ちゃん、いないのー?」
あーあ。お母さんはよく頑張ってくれた。仕方あるまい。多勢に無勢。そして草食は肉食に食べられる運命なのです。光が差し込み空いていく扉を見ながらそう感じました。
とっっっても疲れました。本当ボクのことなんだと思ってるんだ。