こんにちは。
カクヨム運営公式レビュワーの方からレビューを頂いて以来、多くの方に「天霧の樹影」を読んでいただいております。ありがとうございます。
本作品はライトノベルではないため、読み始めて戸惑われる方がおられるのではないかと思い、簡単ですが作者による解説をしてみたいと思います。
ざっくりいうと、「ミルフィーユ」です( ゚ω゚)
羽代という架空の土地を設定し、古代から現在に至る歴史の断層を重ねているのが本作の基本骨格になります。歴史の千枚重ねです。蕪の千枚漬けは好物です。
「白鷺の血潮」と「天霧の樹影」を続けて読んでいただくことで出来事の帰結がつながり、1つの物語が成立する構成となっています。なので、前半の「白鷺の血潮」を読み終わった段階では少々( ゚ω゚)? みたいな感想になるかと存じます。
( ゚ω゚)?となる理由は、須貝忠孝の心理を本文中に明記していないから、ということに集約されるのではないでしょうか。読んでいただいた方に( ゚ω゚)?と思っていただくこと、それこそが私の意図しているところで、本作のギミックの1つです。
「白鷺の血潮」では意図的に詳細に描かなかった須貝忠孝の心情は、「天霧の樹影」で開示されておりますので、ぜひそこを読み取っていただきたく存じます。
そして物語全編を読んでいただき、読後の感想としてそこにストーリー以外の何か言語化されないものが残ったとしたら、それはえらいこと重ねに重ねた断層によって焦点が合わないことによる違和感によるものかと存じます。
初読からがっつり焦点が合ったよ! という方はおそらく歴史に非常に深い造詣をお持ちの方かと存じますお友達になってください(そんなマニアな方向けに:「白鷺の血潮」で"伝導僧"と"六部"を使い分けている理由もがっつりあるんですわ( ゚ω゚)ククククク・・・・・・
焦点が合わない、すなわち、それだけの歴史の厚みを感じていただきたいのです。
「白鷺の血潮」では古代から鎌倉期、「天霧の樹影」では室町期から江戸時代、すっとばして現在までの歴史断層を意図的に重ねています。両短編あわせて共通している要素は「主従」「仏教」「地学(地形)」となります。
共通している要素は「容易には変わらないもの」で、そこに「人の手によって変化を余儀なくされたもの」を随時加えることで時代の流れを表現しております。
レビュワーの高橋様に頂いた「諸行無常」という言葉は、まさしく本作で私が書きたかったことであり、指摘して頂いたことは大変うれしく思います。ありがとうございます。
そんなわけで「天霧の樹影」、同時に選んでいただいた他の3作とは毛色が妙な作品ではございますが、この機会にマニアな方ほどたまらない多層の歴史を1つ(2つの連作短編ですが)の話で読める珍作を是非、お試しください!
最後になりますが、本作を「縦から始まる主従の関係」4選の1つに選んでいただき、ありがとうございました。改めて深く御礼申し上げます。