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取材ノート:「翠雨の水紋」(28)芝の薩摩藩邸

寅衛門「なんかしばらく儂ら、封印されてなかったか」
寅吉「なんでしょうね、ワシらのキャラと被る登場人物がいる話を執筆中の時は封印されるらしいです」
寅衛門「・・・・・・書き分けろよ、せめて作者の頭の中だけでも」

寅吉「そして今日は昨夜、挫折した薩摩屋敷周りの取材ノートですな!」
寅衛門「今回だけでは情報を放出しきれないのでまた折を見て第2弾を!」
寅吉「江戸のファーストフードもまだですよね」
寅衛門「資料がもりもり、盛りだくさん!」
寅吉「取捨選択、必要ですなあ」

寅衛門「まず①。西尾氏の上屋敷こと羽代上屋敷から南方向をみるとこんな感じで、あの藩主の走り出しがここだ」
寅吉「いうて、馬に乗ってますよね」

寅衛門「②の虎ノ門という地名は、東京に住むものでなくても聞いたことがあるだろう」
寅吉「官庁街ですよねえ」
寅衛門「『翠雨』作中では、酒井氏の市中見廻り組ならびに新徴組の屯所をここに置いた」
寅吉「資料が残っていない分は自分で補完しなければならない厳しさ。一応、中規模の番所があったので、市中見廻り組が立ち寄ってもおかしくない、という判断でGoサイン出しました」

寅衛門「③は虎ノ門から南へ行くと着く芝公園。増上寺の境内はかつてこの芝公園一帯を占めていた」
寅吉「東京タワーがあるのもここですぞ!」

寅衛門「芝増上寺の境内に隣接してあったのが④芝神明、別名、芝大神宮だ」
寅吉「伊勢神宮の系列で、天照大神が御祭神だそうです」
寅衛門「しかも明治からではなく平安時代から、だからな」
寅吉「本編に絡んでくるネタバレは止めて下さいよ」

寅衛門「④の周辺には陰間茶屋があったとは、この間の儂らの出ない取材ノートで既に報告済みだ」
寅吉「その陰間茶屋付近から走り始めた修の字が通ったのが⑤」
寅衛門「・・・・・・なんでそこから走り始めているのかは、本編をお読みください」
寅吉「ほんとにもう……」

寅衛門「一方、あの藩主が馬で爆走するのが⑥。⑤が裏通りで、こちらが表通りになる」
寅吉「広いっすねえ」
寅衛門「馬で走るからなあ。細い道より広い道の方がスピード、出るだろう」
寅吉「・・・・・・藩主はそれでいいかもしれませんが、その他大勢は皆、徒歩ですよね」
寅衛門「徒歩だな」
寅吉「全力疾走……」
寅衛門「ガンバレ!」
寅吉「ファイト!」

寅衛門「⑦は、勝海舟と西郷隆盛の会談で有名な鹿島神社だな」
寅吉「よくよく歴史を見ると、鹿島神社と云うより、個人神社」
寅衛門「これも平安時代からの歴史がある神社で、もちろん切絵図にもこの神社は記載されている」

寅吉「ちょろっと話が出た勝海舟と西郷隆盛の会談ですが、なんですか、何の話し合いですか」
寅衛門「それが有名な、江戸城無血開城についてのものだ」
寅吉「有名か有名じゃないかは日本史の勉強の程度で変わってきますが……」
寅衛門「ん?篤姫でも八重の桜でも坂本龍馬でも西郷隆盛でも、幕末に関わる大河ドラマなら必ず触れる歴史上のキーポイントじゃないか!」
寅吉「ああ、だから作者、うきうきで見に行ったんですね」
寅衛門「そしたら大規模再開発中のため、この有様!⑧」
寅吉「う~ん、残念!」

寅衛門「ここは三田という駅に近い場所なのだが、昔はこの薩州蔵屋敷、海に面していた」
寅吉「⑦もそうですよね」
寅衛門「そして本編で出てきた薩州蔵屋敷脇から伸びる砂浜の跡地が⑨」
寅吉「海だったところがJRの線路ですねえ」
寅衛門「かなり海岸線が後退している」
寅吉「こんなところで大砲を、モガッ!」
寅衛門「おっと本編のネタバレはそこまでだ!」

寅吉「ふう。で、えっとめっちゃ見づらい切絵図を眺めてみたんですが、これ、羽代上屋敷から薩州蔵屋敷までどのくらいあるんですか?」
寅衛門「およそ3.5kmだな」
寅吉「作者、3kmを12分で走ると云っていましたよね」
寅衛門「羽代の皆さんなら、10分切るだろうな」
寅吉「案外近いんですね」
寅衛門「だからこそ物語が成立する」
寅吉「霞ヶ関から田町、なんて駅名だけ聞いたら、タクシー呼ばなくちゃなあ、とか思いますが、走って行けばイケそうですね!」
寅衛門「東京の夏、10分間全力疾走とか、死ぬ気か?」
寅吉「え、やっぱ死にます?」
寅衛門「死ぬ。確実に」
寅吉「あ~、だから作者、取材を冬に集中しているんですね!」
寅衛門「冬の方が行動しやすい、とは作者の言い分です」


寅衛門「さて、『翠雨』の一つの山場を越えて、連載の残りもあとひと月ほどとなってきました」
寅吉「これまでお読み頂いた方も、これからお読みいただく方も、読んでみようかな?などとうっかり思ってしまったそこの貴方も」
寅衛門「どうぞ物語の最後まで、お付き合いいただければ幸いです」
寅吉「カクヨムコン応募作品『翠雨の水紋』、」
寅衛門・寅吉「どうぞよろしくお願いします!」

*資料は国立国会図書館デジタルコレクションより引用しています。
〔江戸切絵図〕. 築地八町堀日本橋南絵図https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1286660
〔江戸切絵図〕. 芝愛宕下絵図https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1286662?tocOpened=1
〔江戸切絵図〕. 外桜田永田町絵図https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1286657?tocOpened=1
〔江戸切絵図〕. 芝高輪辺絵図https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1286663?tocOpened=1

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