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……屋根の時代考証がヤバい。

寅衛門「え~、ここの作者、捻挫の後遺症を気にせずにガシガシと変わらず歩き回っているようですが」
寅吉「良い子は真似しちゃダメですぞ!」
寅衛門「先日、朝永讃岐守上屋敷こと、農林水産省合同庁舎から品川の薩州蔵屋敷まで歩いたそうだ」
寅吉「写真撮りながらで50分」
寅衛門「普通に歩いたら40分弱か」
寅吉「走るとどのくらいですかね」
寅衛門「作者、3kmを10分程度で走るらしいが」
寅吉「ほ~ん、じゃあ幕末、体を鍛えている武士の皆さんはそれより早いタイムを期待できますな!」
寅衛門「なんでそう体育会系なイベントを物語のクライマックスに持ってくるのか」
寅吉「みんな、走れ~!」

寅衛門「で、薩州蔵屋敷跡は現在工事中でどうしようもなく、近くにあった芝の見番を見学してきたそうだ」
*港区伝統文化交流館https://minato-denbun.jp/

寅吉「見番?」
寅衛門「花柳界の「置屋」「料亭」「待合」をまとめる"番所"だ」
寅吉「おお、なんだか華やかそうな雰囲気ですな」
寅衛門「ここでは芸者たちが集まって稽古をする大広間や、決まり事を確認する会議場などがあった。今は一般公開されている」
寅吉「階段の螺旋の形がいかにも風流ですなあ」

寅衛門「そしてここの資料展示で作者、ぴゃっ! と飛び上がった」
寅吉「また何ですか、チキン通り越してヒヨコですか」
寅衛門「そこにはこのような解説が」

――正面玄関は唐破風の優美な屋根。唐破風屋根は、明治になるまで一般の家屋では設置が禁じられており、神社仏閣でしか見ることができなかった。

寅吉「Word 全文検索置換[唐破風→破風屋根]Enter!」ッターン!
寅衛門「ま、使ってなかったんだがな」
寅吉「あっぶな」
寅衛門「なんとなく、このあたりやべーな、という予感がして、屋根の詳細は描写していなかった作者のチキンさがプラスに働いた稀有な事例だ」

寅吉「たしかに、幕末期の江戸武家屋敷の写真を見ても、唐破風はないですね」
寅衛門「ぎりぎり似たような形はあるが、特に江戸中期以降、大名屋敷は華美な装飾を禁じられるようになった。幕府から咎められても言い逃れできる程度のなんちゃって唐破風はあったのかもな」
寅吉「豪華な門構えにした、というだけでお取り潰しになった藩もあるんですよね」
寅衛門「徳川御三家だけが許されていた可能性もあるが、逆に徳川御三家以外の大名屋敷に唐破風描写をしてしまったらその時点でボッシュートだ」
寅吉「ああっ! ラストミステリーまで残しておいたスーパーひとしくんがっ!」

寅衛門「寺社仏閣にはあるからうっかり古い建物にはあるだろうと思いがちだが、江戸時代こそ、寺社仏閣と武家屋敷の建築様式が明確に区別されていた時代だからな」

寅吉「しかし危ないですねえ。他にもあるんじゃないですか?」
寅衛門「舞台装置として必須な建築用語については、基本、すべて考証は終わっている」
寅吉「いうて、参考文献1冊では厳しいんですよね」
寅衛門「間違えがあるからなあ、参考文献と云っても。古今と、著者の分野違いを入れて3~4冊が妥当だな」
寅吉「一つの項目についてですよね」
寅衛門「まあな。他にも壁について、塀について、敷地について、植樹についてetc. それぞれの資料は一通り目を通している」
寅吉「しかし、屋根って。そんなパーツ毎に考証が必要ですか」
寅衛門「屋根の主要参考文献は1つ。あとは他の資料から引用している」
寅吉「屋根というカテゴリーで1本あるのがマニアックですよね、ほんと」

寅衛門「そんな時代考証に手間取って進行が遅れ気味だ」
寅吉「これから心理描写が鬼のようになってくるというのに……」
寅衛門「めんどくさいから、あいつらイチャつかせとくだけでいいか、とは作者の言葉」
寅吉「気を付けよう、節度ある性表現! 守ろう、R15!」

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