「それでは来年度新入生のクラス分け・授業方針の検討を行いたいと思います」
教頭の目くばせを受け、中堅の男性教諭が立ち上がった。手にした資料に視線を落とし口を開く。
「来年度は聴覚優位の子が多いようです。聴覚優位クラスを2つに分割し、第二音楽室を開放し、第一と共に二室で回す形にしたいと考えております。また、年々聴覚優位の子が増える傾向にある為、ヘッドホン等を利用した普通教室での授業も検討しています」
「では、聴覚優位クラスは音井先生と琴谷先生で担当してください」
分かりました、と短く答えた男性教諭に頷くと、教頭は女性教諭へと視線を向けた。視線を受けた女性教諭は資料を手に立ち上がる。
「言語優位クラスは今年に続き一クラスの予定です。10人を下回った為、県立図書館での授業時間増加を検討しています。日時につきましては図書館側の担当者と調整中です」
教頭は小さく頷くと、若い男性教諭へと視線を向けた。
「視覚優位クラスは」
がたがたと椅子を鳴らしながら、若手男性教諭は慌てて立ち上がった。
「すみません。視覚優位クラスは来年度一クラスの予定です」
ひとつ咳払いをして若手教諭が続ける。
「本年度試験的に導入された美術館巡りは保護者の方には好評でしたが、表現の偏りが出やすいとの報告もあがっています。一昨年、生徒から人気があった写生を復活させ、インプットとアウトプットを・・・・・・」
就学時子ども認知特性検査が義務化されて約10年。
今日もまだ職員室の照明は消えそうにない。