• 詩・童話・その他
  • 現代ファンタジー

物語が始まらない『結界販売中』

「結界???」

 仕事中だというのに、私はこの二文字から目が離せなかった。

 プレゼンの資料を探している最中だった。
 普段開かないようなイベント用品関連の会社のホームページ。目的の商品ページの左側。製品一覧の一番最後に取って付けたような「結界」の文字。

 なにを考えているんだと頭を振る。仕事に戻ろう。置いてきたはずの中二病精神がこちらを見ているが、そんなの無視すればいい。友と新たな印を開発した日々はもはや過ぎ去ったことだ。

 カチッ。白い矢印が「結界」の文字の上で小さく震える。
 フレキシブルタイプ。バータイプ。フラットタイプ。種類ごとに区切られた””空間展示用”の結界、観覧者が作品に近づきすぎない為の、バーがずらりと並んだ。

「あ~~~そ~だよな~~」

 がっくしとうなだれながら画面を閉じた。
 ほんの少しだけ、少しだけわくわくしたのに。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する