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『終わる世界の片隅で、また君に恋をする』読了

Kindle Unlimitedで。

忘却病という病気が流行っている世界で、だんだん他人を忘れていってしまう世界のラブストーリー。

「嫌なこと忘れられて超ラッキーじゃん!」という歪んだ観点から読みました。

設定がかなり好みでした。終末モノはとても好きなのですが、忘却病によって人が減っていく世界というのは美しい終末です。

汚い終末はなんですか、というと『ウォーキング・デッド』になります。シーズンどっかまで見ましたが「生きてるのがしんどいから終末でのんびりしたいのに辛いことばっかあってウゼェ!」と思って見るのをやめました。

終末と恋愛ものは相性がいいのか、いつだったか『こんなにも優しい世界の終わりかた』という小説を読んだ時はとても充実した記憶があります。



ちょっと前に『由比ガ浜機械修理相談所』を読んでとてもおもしろかったのですが、私はどうもこういう『優しくて女性を諌めたり窘めたりすることができる一般常識を備えた一人称が僕の男性』というものを自分では書けないので他の作品から接種しています。

口を開けば「おまえ何言ってんの?」と言われ続けてきたクレイジー側としては、彼らがポンポンポンとそつのない対応をするのを見るたびに「どうやってやるのそれ!? 俺のたまごっちは何にも進化しない!!」みたいな気持ちになります。


同時に、たとえば『終わる世界の片隅で、また君に恋をする』でも『由比ガ浜機械修理相談所』でも、主人公の造詣が間違っているわけでもないし、そこに色をつけるのは本筋と違うということは理解しつつも、私が感情移入することは難しい主人公たちなので、物足りなさを感じます。

『いろいろ考えたんだけどさ、やっぱお前をブチ殺して俺はこの道の先にいくことにした』みたいなことを言い出す主人公じゃないと何を考えてるのかよくわからないんですが、かといってそういう主人公たちに比較で挙げた二作のように優しく穏やかで品のある世界観は似合わないんですね。

そういう主人公を出せ、というのではなく、『俺には理解できない存在がある』ということを再認識しつつ物語を読み進める、という読書体験をした二作となります。


『終わる世界の片隅で、また君に恋をする』は展開が唐突だという感想を見かけましたが、これは敷いたプロットから逸れないように忠実に作ったからだと思います。連作短編である以上は展開の切替が発生するのはやむを得ません。
それをカバーするには連作短編そのものの時間や視点をうまくズラして濃淡をつけるということが考えられます。が、ラブストーリーである以上は主人公の視点は変更しづらいし、時系列の操作も難しい。
その短編一つ一つの説得力や読了感を底上げする、という手がありますが(ようするに各短編から『繋ぎ』と認識されうる箇所を削ぎ落とすかカモフラージュする)、それはとても労力のいる作業なので執筆スピードが落ちます。最悪は拘泥した挙げ句に完結させられないという事態も発生しかねません。

何が言いたいんだといえば「展開が唐突だ」という感想は自然なものであるにはしても、現実的にそれをカバーするのってかなり難しいんだよね、というところです。

そのやり方を模索していくのは大切です。

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