住宅街の路地に無人の花屋ができた。
どうやらこの土地の主が自分の家の庭に咲いた花を摘んで束にしているらしい。
少しずつバランスの違う中からひと束選び、貯金箱のような箱に小銭を落とす。
「お、まいったな」小銭が足りない。
50円が悩ましい。
「まぁいいか。これだけの花を買おうと思えば500円はするだろうし」と
200円を入れようとして気がついた。
花代150円也の横に、もしくは150円相当の物
と書いてあるのを。
「もしくは…相当の物…」
私は自分の荷物をゴソゴソとあさり、
ボールペンを、、いや。メモ帳、ポストイット…いやいや。
ハンカチを…いや、未使用のマスク…
予備の靴下…、
結局150円相当の物は見つからず、
200円を缶に落とし、この花束をもらって帰って来た。
試されているような気持ちになって。