縹 イチロ

未曽有の飢饉におそわれた年、少女《美》は家と家族を失った。 弟の埋葬のために訪れた荒れ寺で、鬼に出会ってしまう。しかし、目が悪いために鬼と分からず、寺に住まわせてもらうことになる…

当たり前だと思っていた日常にある日ぽっかり異世界への扉が開く。 それが自分の家のトイレだとしたら？ 水漏れを直したばかりのトイレの確認を、母に頼まれ足を踏み入れたのが運の尽き。…

『お前の養い子はまだ仕える先を決めあぐねておるのか？』 顔を会わすたび、お決まりのように巫鳥(ｼﾄﾄﾞ)のお小言がこぼされる。それは時雨(ｼｸﾞﾚ)の養い子《セン》がそろそろ十…

雨のなか子供が独りで泣いていると、雨女がさらいに来るよ。 そんな言い伝えが残る農村で育った少年《セン》。 穏やかな暮らしを育んでいたその村を災害がおそう。貧困と飢餓に耐えかねた…

嵐が通過するという悪天候のなか。 思い出のカフェで、今は亡き恋人の誕生日を独り祝うフェリシティ。 悲しみを終わりにしたいと思いつつ、忘れられずに苦しむ彼女のもとへ、《泪の収集家》…

数十年前から調査団を派遣し、死の星と化した《アース》の状態を調べてきた。だが、現在人類が拠点としている《エウロパ》との往復はやはり時間と費用がかかり過ぎると言うことになり、比較的…

人の住む町から遠く離れた最果てに、 迷い込んだら最後。二度と出てこられないと噂される森がありました。 そこは色々な事情を抱えた人が迷い込んできます。絶望した男、迷子の少年、母を探…

夜に峠を越えたいときは、三つのことに注意するといい。 火を絶やさないこと。 寝てはいけない。 そして、花の咲いている樹には決して近寄らないこと。 命が惜しいと思うなら。 …

人の世に、まだ古(いにしえ)の神や妖化しがいた頃のお話。 さる山の女神に守られた霊峰の中腹に、うさぎの妖化しが住んでおりました。 姉の名を白嶺(シラネ)、妹の名を黒嶺(クロミネ)…